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HOME   »   スケート  »  日本男子スピードスケート500mの系譜
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 スピードスケート競技における男子500mは、我が国の得意種目です。過去の冬季オリンピックで9個のメダルを獲得しています。ひとつの種目で9個のメダルを獲得している競技は、あまり多くないと思います。

 日本人として最初に世界のトップクラスに立った選手は、鈴木恵一選手でしょう。
 1942年生まれの鈴木選手は、1964年23歳の時にインスブルック五輪に出場し、男子500mで5位入賞を果たしました。
 そして、1968年のドイツ・インツェルの競技会で39秒3の世界新記録を樹立し、同年のグルノーブル五輪に出場しました。世界記録保持者ですから、当然金メダルの最有力候補でしたが、3コーナー辺りでスケートの動きが一瞬止まり、右足が浮いたまま少しの間滑り、コーナリング動作を再開しました。この一瞬の間が、タイムロスに繋がり、鈴木選手は8位に終わりました。

 私は、優勝を期待して見ていましたので、本当に残念でした。何しろ、オリンピックスピードスケート競技の全ての種目で、日本人スケーターがメダルを獲得したことが一度も無かった時代のことですから、国民の期待がとても大きかったのです。

 テレビ放送では「バランスを崩した」とコメントされていましたが、後に「レース直前に小石を踏み、ブレードが欠けていた」ことが原因であったと伝えられました。

 「世界一のコーナリング」と言われた鈴木恵一選手はオリンピックで好成績を残すことは出来ませんでしたが、世界記録を2度更新し「日本人スケーターでも男子500mなら世界と戦える」ことを示し、この競技の先駆者となりました。その功績は、報じられている以上のものであったと思います。

 1972年の札幌五輪でも、日本選手はスピードスケートでメダルを獲得することが出来ませんでした。

 そして、1984年のサラエボ五輪を迎えます。
 前年1983年の世界スプリント選手権大会で、日本人として初めて優勝した黒岩彰選手に期待が集まりました。
 この大会の男子500m種目は、天候不良(雪が降り続いた)のため競技開始が5時間ほど遅れました。この影響があったのか、黒岩選手は全く実力を発揮することができず10位と大敗しました。

 この頃は、他のスポーツ競技・種目においても「日本人選手の本番での弱さ」が妙に強調されていた時期でもありました(私は根拠の無いことだと考えています)から、「黒岩もだめだったか」といった空気が漂いました。
 しかし、ここに伏兵が居たのです。北沢欣浩(きたざわ よしひろ)選手でした。前年から急速に実力をつけていた北沢選手は思い切った滑りを展開し、見事に銀メダルを獲得しました。日本スピードスケート史上、というより日本スケート史上、初のオリンピックでのメダル獲得という快挙でした。

 続く1988年のカルガリー五輪では、黒岩彰選手がサラエボの悔しさをバネに、慎重な滑りを見せて、銅メダルを獲得しました。

 さらに1992年のアルベールビル五輪では、黒岩敏幸選手が銀メダル、井上純一選手が銅メダルと、男子500mで2つのメダルを獲得しました。

 そして1994年のリレハンメル五輪では、堀井学選手が銅メダルを獲得しました。

 これで、4大会連続のメダル獲得となりましたので、男子500mは日本の得意種目となったのです。
 一方で、これだけメダル獲得が続くと、「まだ取ったことが無い金メダル」への期待は否応無く高まります。

 1998年の長野五輪は、日本開催ということもあり、また前年までの同種目の世界大会他における日本人選手の活躍も相俟って、日本男子スプリント陣への期待は最高潮でした。
 こうした地元開催のオリンピックにおける過剰な期待は、選手にとって大きなプレッシャー・精神的重圧となるものですが、清水宏保選手はこれを見事に跳ね除け、金メダルを獲得しました。2本揃えた、素晴らしいすべりであったと思います。

 2002年のソルトレイクシティ五輪でも、清水選手は銀メダルを獲得しました。これで、冬季オリンピック6大会連続のメダル獲得となりました。本当に素晴らしいことだと感じます。

 2006年のトリノ五輪は、日本選手団全体が絶不調で、大会終盤に荒川静香選手が女子フィギュアスケートで金メダルを獲得しましたが、大会を通じて日本選手団のメダルはこれひとつでした。男子500mの連続メダル獲得も潰えてしまいました。
 ソルトレイクまでの実績から、他の競技・種目も含めて、当然のように冬季五輪のメダルを獲得できるという雰囲気が日本選手団に存在したのでしょう。「緩み」は、知らない内にチーム全体に蔓延するものかもしれません。

 トリノの失敗を踏まえて、再度キメ細かな強化を図り、選手層の底上げを図った結果として、2010年バンクーバー五輪男子500mでは、長島圭一郎選手が銀メダル、加藤条治選手が銅メダルを獲得、この種目の日本の伝統を示しました。

 ここまで、スピードスケート男子500m種目の日本人スケーターの実績を、駆け足で見てきました。世代交代も含めて、連続した強化策が実っています。これだけの結果を継続して残せるのは、ジュニア世代からの強化体制が構築・維持されていることを示しています。日本中のスケートが出来る地域に、レベルの高い指導者が相当数存在していて、切磋琢磨が続けられているということでしょう。
 そのことが、最も素晴らしいと感じます。

 さて、近時の報道を見ると、ソチ五輪は長島選手と加藤選手を中心として500mに臨むことになりそうです。
 長島選手は31歳、加藤選手は28歳、共に2006年のトリノ五輪から出場していますから、3回目のオリンピックということになります。相当ベテランの域に達していますが、今シーズンは当初から35秒前後のタイムを連発しています。好調に観えます。ソチでは、「天才」長島圭一郎と「元世界記録保持者」加藤条治の集大成の滑りを魅せてくれることでしょう。

 1968年のグルノーブル五輪の頃、鈴木恵一選手は、白い毛糸の帽子、グレーのセーターで競技に臨んでいたと記憶しています。現在のような、肉体に張付くボディスーツとは全く違う装備です。もちろん、スラップスケート靴でもありませんでした。そうした中で、1970年には38秒50の世界新記録を樹立しました。

 その後、日本人スプリンターは、エアハルト・ケラー選手(ドイツ)、エリク・ハイデン選手(アメリカ)、ウーべ・イエンス・マイ選手(ドイツ)、ジェレミー・ウォーザースプーン選手(カナダ)、ケーシー・フィッツランドルフ選手(アメリカ)といった世界の強豪達と、互角の戦いを演じてきました。

 「肉体と精神の瞬発力が試される男子500」は、日本の得意種目なのです。
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