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HOME   »   サッカー  »  [FIFAワールドカップ] 1次リーグの変貌
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 FIFAワールドカップWCにおける1次リーグは、本大会の予選リーグの位置付けです。

 今年行われるWCブラジル大会であれば、出場全32チームが4チームずつA組~H組までの8組に分けられていて、各組1位と2位の2チーム、計16チームが決勝トーナメントに進出します。

 現在のように、1次リーグを勝ち上がった16チームが決勝トーナメントに進出する形になったのは、1986年WCメキシコ大会からですが、この1次リーグの戦い方は、1994年アメリカ大会と1998年フランス大会で、様変わりしました。

 「様変わり」の理由は、出場チーム数がアメリカ大会までの24チームから、フランス大会から32チームに増加したためです。

 アメリカ大会までの全24チーム参加の時には、1次リーグが各組4チームずつの6組でした。6組から上位2チームが決勝トーナメントに進出するとなると、計12チームですから、16チームのトーナメントを構成するのに4チーム不足してしまいます。
 そこで「各組3位の6チームの中から成績上位の4チームを選定し決勝トーナメントに進出させる」ルールだったのです。

 現在の8組制の下では、各組3位のチームには決勝トーナメント進出の可能性がゼロですので、ここに大きな違いが生じます。

① 1次リーグの2ゲームを終え、最終の3ゲーム目に臨む前に、各組で2位3位を争う成績のチームは、自分が所属する組の他のチームとの成績比較、勝ち・負け・引分けの際の勝ち点動向、得失点差、総得点などの影響をシミュレーションするのは当然として、別の組で3位になる可能性の有るチームとも、同様のシミュレーションをしなくてはなりません。
 これは、相当難しい作業です。相当のシミュレーションの後、可能性が高いケースを見据えて、最終戦に望む戦略を立案することになります。

 もちろん、最終戦に勝つことが最も良いのですが、相手もワールドカップ出場国ですから強豪ぞろいですので、負けた場合の得失点水準や、引分けの場合の決勝トーナメント出場可能性などを考慮して、最終戦は「引分け狙い」「得失点差を考慮して3点以上取って勝つ」「負けても1失点に抑える」といった戦略を立案し、実行するのです。

② 自組で3位になっても、4/6の確率で決勝トーナメントに進出できるとなれば、各チームの戦い方は「負けないこと」を最重要視するものとなります。なぜなら、勝ちに行く=積極的に得点を取りに行くと、前掛りになるなどして、失点のリスクも増大するからです。「敗戦=勝ち点0」だけは絶対に回避する試合運び、つまり「引分けでも良い」という戦略になりやすいのです。

 2ゲームを2引分けで終えて、勝ち点2を確保しておけば、最終の3戦目で勝てば、決勝トーナメント進出に大きく前進できますし、たとえ3戦目も引き分けて勝ち点3に終わったとしても、各組3位同士の比較においては、十分上位4チームに入る可能性が残るのです。

 従って、アメリカ大会までの1次リーグは「負けない試合」に徹するチームが多く、とても守備的なゲームが多かったし、同時に行われる1次リーグ最終戦は、同組のみならず他組のゲームの進行状況も考慮しながら、大変難しいゲーム運びを強いられたのです。

 これはこれで、見ている方からすると本当に面白く、スリル満点でした。試合時間残り数分、「この試合を引き分ければ、3位チーム比較の上位4チームに入れる」と考え、失点しない試合運びを続けていたら、他の試合で競っていたチームが得点してしまい、決勝進出を逃してしまう、といったリスクが常に存在していました。観客にとって、面白くないはずがありません。

 実際の大会を見てみましょう。

 1986年のWCメキシコ大会1次リーグでは、A組3位のブルガリアとE組3位のウルグアイが、ともに0勝1敗2引分けの勝ち点2で決勝トーナメントに進出しました。3位チーム同士の比較で、3番目と4番目での進出です。
 ウルグアイは、得点2失点7の得失点差▲5と、とても苦しい状況だったのですが、比較5番目のハンガリーが1勝2敗勝ち点2で2得点9失点の得失点差▲7でしたので、4番目になれたのです。ウルグアイは、1次リーグ最終戦でスコットランドと0-0で引分け、同じ最終戦でハンガリーはフランスに0-3で敗れたため、順位が逆転しました。勝ち点、得失点差とも優位にあったハンガリーが、最終戦で涙を飲んだのです。

 1990年のWCイタリア大会1次リーグでは、B組3位のアルゼンチン、D組3位のコロンビア、E組3位のウルグアイが、いずれも1勝1敗1引分けの勝ち点3で決勝トーナメントに進出しました。1勝1敗1引分けなら十分に決勝トーナメントに行けたのです。
 それどころか、F組のアイルランドは0勝0敗3引分けの勝ち点3で同組2位となり文句無く進出、同組3位のオランダも同じく3引分けで、3位比較の3番目で進出しています。3試合全てに引き分ければ、決勝トーナメントに十分行けたのです。
 この大会の各組3位比較の4番目は、前大会と同じウルグアイでした。南米の名門ウルグアイのしぶとさが良く分かります。

③ 一方、1998年フランス大会以降の1次リーグ8組、各組の2位までが決勝トーナメント進出という制度の下では、絶対に2位以上にならなくてはなりませんから、各チームは「勝ちに行くゲーム」を展開します。

 参加チーム数が24から32に増えたために、どうしても各組に力の劣るチームが存在するようになりました。これまで少なかった「1次リーグ3戦全敗チーム」が出てくるようになると、上位3チームが2勝1敗となる可能性=2勝1敗でも決勝トーナメントに進出出来ない怖れがありますから、3引分けなどを狙うことなく、各チームは「なるべく多く得点し、勝つ」以外に道が無くなってしまったのです。

 1994年のアメリカ大会から、1次リーグ・1勝の勝ち点が、それまでの2から3に引き上げられたことと相俟って、「ゲームに勝たなくては決勝トーナメントに行けない」時代が到来しました。

 従来のように、例えば先取点を挙げたら守りに入り、1-0の勝利を狙い、万一同点にされても、引分けに持ち込む、という戦略が取れなくなりましたから、「攻撃的なサッカー」が展開されることとなり、それはそれで面白い1次リーグに繋がったとも言えます。

 一方で、引分けを積み重ねながら、あわよくば勝ちを拾わんとする戦略や、3試合目の目まぐるしい駆け引き、といった面白さは無くなりました。イタリアサッカーの特徴である堅守「カテナチオ」が、近時見られなくなった理由もこの辺りに有るのかもしれません。

 参加数24チームのワールドカップと32チームのワールドカップ、どちらの1次リーグが面白いのかについては、色々な意見があり結論は出ないでしょう。
 
 しかし、1次リーグの内容が別のものになってしまったことは事実です。

 0勝1敗1引分けや0勝0敗2引分けの状況で、第3戦に臨み、その第3戦を引分けても、決勝トーナメント進出の可能性が十分に残っていた時代のワールドカップ1次リーグは、味わい深いものであったとも思います。
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