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HOME   »   MLB  »  [MLB] ベースボール・野球のはじまり
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 木の棒などで、ボール状のものを打って競う遊戯は、おそらく世界中で紀元前から行われていたと思います。ルールも様々だったことでしょう。

 こうした様々な遊戯が、次第に統一された形になって行くのは中世です。とはいえ、これも各地各様のものだったのでしょうが、その中で17世紀のイギリスで行われていた「ラウンダーズ」というゲームは、現在のベースボールにやや近いものに見えます。
 ぺッカーやフィーダーと呼ばれた投手が、ボール(小石を詰めた靴下)を投げ、ストライカーと呼ばれた打者がバット(船の艪など)で打ち返し、石や杭でできた4つのベースを回るゲーム。なんとなく似ています。

 もちろん、このラウンダーズも地域毎に様々なルールのもとで行われていたのですが、町民や村民の集会(ミーティング)の折には、よく行われましたので、「タウンボール」と呼ばれたこともあったそうです。

 「投手が打者にボールを投げ、打者がそれを打ち返す」。その打球をフィールドに適当にちらばった野手が取り・投げて、打者走者にぶつけると打者走者がアウトになる。4つの塁を走者が回りきれば得点になる。等々、現在のベースボールに似たルールも整理されつつ、各地で盛んに行われていました。

 18世紀に入ると、ラウンダーズのベテラン選手がチームのまとめ役も兼務するようになりました。これが監督のはじまりで、現在でもベースボールの監督がユニフォームを着るのは、この名残だと言われています。

 ラウンダーズの一種である「ストールボール」をBaseballと表記したものが登場するのも18世紀です。現在のベースボールとは異なる競技ですが、名称としては登場したのです。

 アメリカでBaseballという言葉が記載されている、現存する最古の文書は、1791年マサチューセッツ州ピッツフィールドの町のグランド利用規則です。町の集会所の窓にボールが当たって壊れることが無いように、球技は集会所から80ヤード以上離れた場所で行うように、との規則において、様々な球技の中の一つとしてBaseballが記載されています。

 こうして、「ラウンダーズ」や「タウンボール」が、全米各地で盛んに行われ、時にはこれらをベースボールと呼ぶようになってきたのですが、まだ現在のベースボールに繋がる競技にはなっていませんでした。

 1840年頃に、ニューヨーク・マンハッタンにおいてボランティアの消防団を設立したアレクサンダー・カートライトという人物が登場します。カートライトは、消防団員の結束を固め、運動不足を解消するための方法を考え、「屋外でのスポーツ実施」が有効との結論に達しました。1842年カートライトは、消防団員のチーム「ニッカポッカーズ」を立ち上げ、近隣のマレー・ヒルという所でタウンボールを定期的に行うこととしました。
 ボランティアの消防団における、この努力というか意欲は、ある意味では不思議ですが、江戸の町火消に対する町衆の情熱を考えると、さもありなんとも思います。

 前述のように、タウンボールはルールが固まっていなかったため、ニッカポッカーズは相手チーム毎にルールをいちいち変える必要がありました。カートライトは、この煩わしさ解消のために統一ルールを策定することとし、チームメンバーと協議を重ねました。

 1845年のある日、カートライトはマレー・ヒルにやってきて、プレーをしている消防団員に自分が考えた新ルールを披露したのです。

・チームの人数は、攻撃側・守備側ともに9人ずつとすること
・フィールドを菱形とし、ホームベースに鉄のプレート、他の3つのベースに砂を入れたキャンバス地の袋を置く。塁間は90フィート(約27.4m)とすること
・三振、フライアウト他のアウトのルール。三アウトで攻守交代すること
・ファウルのルール
・21点先取したチームが勝ちとなること

 このルールを聞いた消防団員は、最初嘲笑したそうですが、カートライトの情熱に押されてプレーしてみたところ、面白いことが分かりました。
 これが、ベースボール・野球の始まりです。

 他のスポーツのはじまりも同様ですが、当初ルールを決めていく過程で「狙いを明確にすること」が大切です。カートライトも「消防団員の結束を固め、運動不足を解消するため」という明確な狙いを定めて、ルール作りに邁進したので、こうした優れたルールに辿り着いたのでしょう。

 翌1846年6月19日、カートライト率いるニッカポッカーズは、ニューヨークナインというチームとマンハッタンの対岸ニュージャージー州ホーボーケンのグランドで試合を行い、1-23で敗れました。これが最初のベースボールの試合であり、6月19日は「ベースボールの日」となっています。

 ベースボールの起源として、よく聞くのは「1939年にアブナー・ダブルディが、クーパーズタウンで考案したもの」という説で、野球殿堂がクーパーズタウンに作られるなど、当初はこの説が巷で支持されましたが、後の調査の結果、ダブルディは1939年にはクーパーズタウンに居なかったことが明らかになり、この説が捏造であることが判明しました。

 カートライトが最初に決めたルールは、例えば塁間90フィート・27.4mは現在も同じであることなど、全体として良く出来ていましたが、他のスポーツと同様に何度も見直されました。見直しのポイントは、試合時間の短縮と試合の面白さ向上でした。
一部を記載します。

・最初は、投手は下手投げのみ許されていて、打者は投手にコースの指定をすることが出来ました。
・1857年 21点先取では時間がかかりすぎたので、9回終了時に得点が多かったチームの勝ちに変更
・1858年 打者が投球を見逃した時に「ストライク(打て)」のコールがされるようになりました。
・1863年 真ん中付近を通らなかった投球に「ボール」のコールがされるようになりました。
・1879年 全ての打たれなかった投球がストライクかボールに区分され、9ボールで打者が一塁に行くようになりました。
・1880年 8ボールで一塁へ。3ストライク目を捕手が直接補給すれば三振
・1881年 投手と本塁ベースとの距離が45フィートから50フィートに延長
・1882年 7ボールで一塁へ。横手投げが解禁される。
・1884年 6ボールで一塁へ。上手投げが解禁される。
・1887年 5ボールで一塁へ。打者の投球コース指定ルール廃止
・1889年 4ボールで一塁へ
・1893年 投手と本塁ベースとの距離が50フィートから60フィート6インチに延長

 大変興味深いルール変更が続いています。ストライクが、打者に打つことを促すコールであったことなど、言われてみれば成る程というところ。

① 全体として「打者が打つ」ことが優先されるルールとなっています。当初は、スピードが出にくい下手投げのみ許されていたり(記載しませんでしたが「手首のスナップの利用も禁止」でした)、9ボール→4ボールにしたり、投手と本塁との距離をどんどん遠くしたり、全て打者有利なルール・ルール変更です。

 これは、当初は投手優位、中々打てないスポーツだったのだろうと思われることと、「投球を打つことからゲームが始まる」ことを徹底しようとしたことが要因と思います。
本稿の前半部分に「 」で示した「投手が打者にボールを投げ、打者がそれを打ち返す」というタウンボールの精神が、脈々と引き継がれているのでしょう。
 「ストライク=打て」の精神がベースボールの本質なのだと思います。

② カートライトが決めた塁間90フィートは、現在に至るまで不変です。これは凄いことだと思います。バスケットボールのリングの高さ10フィート(3.05m)も同様ですが「当初、考案者が決めたサイズ」が、ある意味では「偶然」そのスポーツを面白くするサイズであったということが、とても大切なことだと思います。

 もちろん「そのサイズにプレーヤーの方が合わせている」のだという意見もあると思いますが、どちらも本質的には同じことで、当該サイズが言わば「黄金比」であったことが、そのスポーツの発展に、つまり「とても面白いスポーツ」となっていくことに、大きな影響を与えたのです。そして「プレーしても、観ても、面白いこと」が近代スポーツの普及・拡大・発展に最も必要なことなのです。

 2アウト2塁の場面で、ヒット(単打)が出ると、本塁上でクロスプレーになることが多くあります。しっかり守備をすれば、大体クロスプレーになる塁間距離が90フィートであることになります。盗塁の場合も同様、内野手の中間に飛んだ打球も同様。
私は、いつも「ゲームのスリリングさを生むフィールドのこのサイズは素晴らしい」と感じます。そして、それがカートライトという発明者が最初に決めたものであることを思うと、「天啓」がベースボールには宿っていると思います。

 もちろん、サイズは後から変更することができますが、現実には、最初に決めたサイズで各地に競技場が作られ、そのサイズに最適なように、プレーヤーはトレーニングを積み重ね、プレー理論が構築され、道具類も日々進化しますから、後になっての変更は容易なものではないと思います。
 結局のところ、色々な意味で「サイズが時代にマッチしないスポーツは廃れていく」のではないでしょうか。

 我が国にベースボールが伝わったのは1871年。来日したアメリカ人ホーレス・ウィルソンが、東京開成学校予科(今の東京大学)で教えたことがはじまりです。このスポーツは「打球おにごっこ」という名称で全国の特に各大学に広がりました。当初は、大学野球の歴史が、我が国のベースボールの歴史と重なっていました。日本野球の歴史は、別稿にするとして、「野球」という呼び名についてのみ、ここでは触れておきます。

 初めて「ベースボール」を「野球」と日本語表記したのは、中馬 庚(ちゅうまん かなえ)です。第一高等中学校(後の東京大学教養学部)のベースボール部員であった中馬が、卒業に際して、部史を作成することになり、その部史の中の中馬が書いた文章中に「野球」という単語が登場するのです。中馬は「ball in the field」の意味で「野球」としたと言われています。我が国において、ベースボールに与えられた野球という名前は、このスポーツの印象にマッチしたことも重要なことだったのでしょう。

 屋外の広いグランドの中で、太陽の光を燦々と浴びて、投手が投げ、打者が打ち、走り、土煙が上がり、観衆の大歓声がこだまする。「野球」という言葉から、日本人は、直ぐにそうした光景をイメージできたのだと思います。

 ベースボール・野球の発明者であるカートライトの写真が残っています。消防団員の制服を着て、ヘルメットをかぶり、立派な白髭をたくわえた堂々とした男です。彼が、タウンボールを楽しんでいた仲間に、新しい競技の説明をした時、最初仲間は笑って相手にしませんでした。なぜなら、タウンボールが十分に楽しかったからです。何も、訳の判らない競技などにトライしなくても、これで十分面白いよ、と。

 しかし、カートライトは引き下がりません。熱意をもって仲間を説得し、プレーしてもらう機会を得たのです。ベースボールは、この「カートライトの熱意」によって誕生したのです。

 カートライトは1892年に他界しました。ちょうど120年前のことです。

 本日から、2012年MLBディビジョナル・プレーオフが始まります。カートライトを、地元ニューヨーク・ヤンキースタジアムで行われるゲームの始球式に招待したいものです。


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