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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム90] シンザンを超えたのか?
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 日本競馬においては長い間「シンザンを超えろ」というスローガンがありました。前回の東京オリンピックが開催された1964年・昭和39年の三冠馬・シンザン号を超えろ、という意味です。

 シンザンの後、数多のサラブレッドが日本競馬に登場しましたが、シンザンを超えることができたのでしょうか。

1.競走成績
①シンザンの通算競走成績は19戦15勝2着4回です。これは、結構有名な成績です。
②19戦して連対を外さなかったというのは、史上1位の記録です。これに次ぐのが、ダイワスカーレットの12戦連続連対・連対外し無しですから、この点ではシンザンは、いまだに圧倒的な実績を残していることになります。
 シンボリルドルフは、15戦13勝2着1回3着1回6着1回です。返す返すも、1984年のジャパンカップ3着が惜しまれます。
 ディープインパクトは、14戦12勝2着1回失格1回です。

 ルドルフの6着とディープの失格は、海外レースでのものですから、これを除外すると、少なくともディープは日本国内のレースでは13戦して連対を外さなかったということになります。

③シンザンは、当時の牡馬が出走できる平場のG1級レース(皐月賞、日本ダービー、菊花賞、宝塚記念、天皇賞、有馬記念の6レース)を全て勝っています。天皇賞が勝ち抜け制の時代でしたから、天皇賞(秋)に勝利したシンザンは、天皇賞(春)への出走資格がありませんでした。

 当時に比べて、短距離路線、中距離路線、ダート路線とG1レースが増えていますから、「平場のG1レースを全部勝つ」というのは現在では不可能でしょうが、少なくともシンザンは1964年~1965年時点の牡馬G1級レースを全勝しています。当時は前述の6種類のレース以外に平場のG1級レースは存在しなかったのです。

 このこと自体がもの凄いことですが、「シンザンがG1級のレースで不敗であったこと」は並ぶものが無い記録ですし、「この頃は重賞競走自体が少なくて、シンザンの15勝の内5勝がオープン競走であり、2着4回の内3回がオープン競走であったこと」は、シンザンの大レースでの無類の勝負強さを示していると思います。

 ちなみに、ルドルフは天皇賞(秋)2着、ジャパンカップ3着がありますし、ディープには有馬記念2着があります。

④このシンザンの競走成績を明確に凌ぐとすれば、「全勝馬」しか居ないと思います。「クラシックレース優勝実績の有る10勝以上の全勝馬」となると、クリフジ(牝馬)の11戦11勝(1943年の日本ダービー、オークス、菊花賞の変則三冠馬)とトキノミノルの10戦10勝(1951年の皐月賞、日本ダービーの二冠馬)が挙げられます。当然に、全連対です。シンザンの19戦よりは少ないのですけれども。

 このクリフジとトキノミノルは、シンザン以上の成績と観ることも出来ますが、この2頭はシンザン以前の競走馬なのです。「シンザンを超えたか」というテーマには馴染まないかもしれません。

2.種牡馬としての成績
 シンザンは1965年・昭和40年の有馬記念を優勝して現役引退、種牡馬となりましたが、当時は日本競馬がようやく国際化の時代を迎え、海外から優秀な種牡馬が次々と輸入されていた時代ですから、内国産種牡馬(日本で生まれた種牡馬)は極めて冷遇されていました。もちろん、輸入された種牡馬の産駒の方が競走成績が良かったことも事実です。

 こうした時代に、シンザンは種牡馬としても大活躍しました。ほぼ唯一と言ってよい、この時代に活躍した内国産種牡馬でした。
 G1級レースの勝ち馬はミホシンザン(皐月賞、菊花賞、天皇賞(春)の勝ち馬)とミナガワマンナ(同、菊花賞)の2頭。1978年の5位を最高順位として計7回、種牡馬ランキングトップ10入りを果たし、1969年から1992年にかけて「産駒24年連続勝利」の大記録も打ち立てました。この記録は、外国産種牡馬の雄・ノーザンテーストに破られるまで、日本最高記録でした。

 現在では、そもそも「内国産」種牡馬などという概念があまり取り上げられなくなっているほど、内国産種牡馬が大活躍しています。ディープインパクト、ステイゴールド、ハーツクライなどは、いずれも内国産種牡馬ですから、最近競馬を始めた方は「種牡馬というのはそういうもの」とお考えの方も多いと思いますが、ディープインパクト、ステイゴールド、ハーツクライの父はサンデーサイレンスであり、このサンデーサイレンスは史上最高成績の外国産種牡馬なのです。
 つまり、日本競馬において本当の意味で内国産種牡馬の時代が訪れたのは、サンデーサイレンスの子供たちが種牡馬になってからということになります。

 そして、その代表格のディープインパクトは、昨年もG1レース勝ち馬を5頭出していますから、G1レースにおける種牡馬実績においては既にシンザンを超えています。(良い肌馬に恵まれていたかどうかやG1レースの増加などの要因を考慮すると、一概には言えないとの意見も有るとは思いますが)
 今後は、シンザンのように長期間に渡って種牡馬として活躍を続けることが出来るかどうかがポイントとなるでしょう。

3.馬齢
 実は、この項目が最も超えるのが難しいと思います。

 シンザンは、1961年4月に生まれ、1996年7月に没していますから、35歳3ヶ月余の長寿でした。これは生半可な長寿ではなく、現在に至るまで「日本のサラブレッドの最年長寿記録」なのです。

 G1級レースの勝ち馬とか、重賞勝ち馬とかの限定無しで、我が国で生まれた全てのサラブレッドの中で、最も長生きしたのがシンザンというのですから、驚くべき記録です。そのことが分かるというのも、全てのサラブレッドの記録が残されていくという「サラブレッドの宿命」によるものなのですが、これまでに何十万頭*も生産された日本のサラブレッドの中で長寿記録を保持しているのが「三冠馬シンザン」というのですから、何か不思議な感じがします。
 (*1980年代以降の20世紀には、毎年8500頭前後のサラブレッドが生産されていましたし、現在でも毎年7500頭前後が生産されていますから、平均して毎年8000頭として30年間でも24万頭になります。それ以前を含めれば、もっと多いでしょう。)

 また、シンザンが育ち・競走していた時代は、現在とは大きく異なり、カイバ(餌・飼料)の質も悪く、薬や栄養剤も比較にならないほど少なく、治療センターなども現在より遥かに設備の劣るものでした。

 実際、シンザンより少し後の世代であるモンタサン(1966年の朝日杯3歳ステークス勝ち馬)は、1967年の菊花賞直前にカイバに付着していた農薬にあたり激しい下痢と腹痛で出走を断念しています。
 人間と同様?に、食糧事情が良くない時代に育ったシンザンが、ギネス級の長寿記録を保持しているというのは、本当に素晴らしいことだと思います。丈夫で長持ちだったシンザン。「無事これ名馬」とは、こういうことでしょう。

 さて今回は、ここまで「シンザンを超えたか?」をテーマに検討してきました。

 様々な見解が有ることとは思いますが、1~3を考慮すれば、少なくとも「まだ超えてはいない」と思います。(3の馬齢比較については、色々なご意見があると思いますが)

 競走成績を観れば、ディープインパクトがシンザンに匹敵する成績を残していると思いますし、ディープは種牡馬成績でもシンザンを超える成績を残す可能性を秘めていますが、今後を見ていく必要があります。

 シンザンの後、日本で生まれた何十万頭ものサラブレッドが「シンザンを超えろ」とのスローガンの下、挑戦を続けてきました。そして、その結果として日本競馬は世界のビッグレースでも互角に戦えるまでに強くなりました。

 それでも、いまだに「シンザンを超えてはいない」のです。シンザンというのは、凄い馬だったのです。
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日本競馬はシンザンを超えたのか?  
Comment
139
ご存知とは思いますが、シンザンの時代は宝塚記念は大レースではなく、八大競争が
今で言うところの大レースです。
ただ、シンザンが大レースで負けたことが無いのに対し、ルドルフの84年JCや
サンルイレイS、ディープの凱旋門賞はノーカウントにするとしてもルドルフやディープが
本番で負けているというのは確かにシンザン最強説を強力に後押ししているように思います。

140
Re: コメントありがとうございます。
おっしゃる通りです。

グレード制導入から月日が経って「八大競走」という概念自体が
現在では存在感の小さいものになっていますので、
久しぶりに聞かせていただいて嬉しい限りです。

引き続き、コメントよろしくお願いします。

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