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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム12] 秋華賞とテイエムオーシャンとダンシングブレイヴ
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 1996年、前年まで3歳牝馬限定のレースだったエリザベス女王杯が4歳以上の牝馬にも開放されたので、その代わりに3歳牝馬限定のG1レースとして創設されたのが秋華賞です。

 この話は、さらっと書くとそれなりですが、疑問点があります。何故、3歳以上の牝馬限定レースとして秋華賞を創設せず、エリザベス女王杯を4歳以上に開放して、3歳牝馬限定のレースとして秋華賞を創設したのかという点です。
 そんなこと気にしなくても良い、と言われればそうなのかもしれませんが、この理由は中央競馬会の方に聞いてみたいものです。

 もちろん、エリザベス女王杯が京都競馬場芝外回り2400m、秋華賞が京都競馬場芝内回り2000mと異なるスペックのレースですから、中央競馬会として意図があっての創設なのでしょう。フランスの牝馬三冠レースであるヴェルメイユ賞をイメージしたのかとも思いますが、ヴェルメイユ賞は2400mのレースですので、エリザベス女王杯に近い感じです。

 もともと、エリザベス女王杯が3歳牝馬限定の頃から、桜花賞、オークス、エリザベス女王杯を牝馬三冠と呼ぶことがあり、私としては違和感があったのですが、秋華賞に変わっても、依然として「牝馬三冠」と呼ぶのは、いかがなものかなと思います。

 そもそも、クラシック5冠の全てに勝つ権利は、3歳牝馬にしか与えられていないのですから、牝馬三冠と呼ぶに相応しいのは、桜花賞、オークス、菊花賞の勝ち馬でしょう。本ブログの別稿にも書きましたように、英国競馬に範を取った我が国のクラシックレース体系が整備されたのは1930年代ですので、それから90年弱、いまだに桜花賞+オークス+菊花賞の勝ち馬が1頭も居ないのは、ある意味では不思議なことかもしれません。

 その点では、オークス+日本ダービー+菊花賞の勝ち馬クリフジは、我が国の牝馬唯一の三冠馬と言うことが出来ます。菊花賞3000mは、3歳牝馬には厳しいという意見があり、確かに私も過酷だと思いますが、一方で「菊花賞の最大着差はクリフジの大差勝ち」であることを考えると、必ずしもそうでもないなとも思います。
 2400mの凱旋門賞も2年連続で牝馬が制しました。今後、菊花賞に挑戦する牝馬が現れることを期待しています。

 話を戻します。

 秋華賞は、京都競馬場の芝内回り2000mコースで行われますが、この内回りコースというのは直線が330mと比較的短いのです。これがレースの特徴となっていて、4角を前の方で回ってこないと、実力馬でも届かないことがあるレースなのです。
 これには短すぎるとの批判もありますが、中山競馬場の直線が310mで、皐月賞や有馬記念が実施されているのですから、直線の坂の有無はあるにしても、秋華賞競走の特徴として面白いものと考えます。

 世評で牝馬三冠と位置付けられるG1レースですから、毎年3歳牝馬の一線級が揃うレースです。優勝馬も華やかなもので、2002年のファインモーションや2007年のダイワスカーレットは、このレースを制した後、エリザベス女王杯にも勝っています。

 そうした中で今回採り上げるのは、2001年の勝ち馬テイエムオーシャンです。テイエムオーシャンは、父ダンシングブレイヴ、母リヴァガール。生涯成績は18戦7勝です。G1だけでも、阪神三歳牝馬ステークス、桜花賞、秋華賞の3勝している名牝です。

 2001年に馬齢表示が数え年から満年齢に変更になった(21世紀入りを契機に国際基準に合わせた)ため、テイエムオーシャンは「2年連続でJRA最優秀3歳牝馬」を受賞という今後絶対に出ない記録を保持しています。
 たまたま馬齢表記が変更になったもので偶然に過ぎないという意見もあると思いますが、20世紀21世紀を跨ぐ2年間を通して最優秀牝馬に相当する成績を残したのは、偶然ではありえないので、やはり快挙といえます。

 テイエムオーシャンはG1を3勝した後、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念などを7戦して勝てませんでした。この7戦が無ければ11戦7勝の名牝でした。血統他色々な事情があることも分かりますし、他のG1馬にもいえることですが、長く走るのも良いが、勇退の時期も考えてほしいものだと思います。

 さて、テイエムオーシャンのお父さんはダンシングブレイヴです。この馬は1986年のイギリス競馬界、欧州競馬界を席巻した名馬です。
 3歳時、2000ギニーを3馬身差で圧勝、英ダービーは直線で前方がふさがる不利があり1/2馬身差で2着に苦杯するも、続くG1エクリプスSを快勝、さらにG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSにも勝って凱旋門賞に駒を進めました。

 この1986年の凱旋門賞はメンバーが揃い、全出走馬15頭の内11頭がG1ウイナーという、1965年シーバードが勝ったレースと並ぶ、史上最高の凱旋門賞といわれます。ダンシングブレイヴはこのレースも、4角最後方から直線一気に差し切る形で優勝しました。

 生涯成績10戦8勝、1986年の欧州最優秀馬、英国最優秀馬、仏国最優秀馬で、1980年代の世界最強馬との呼び声が高いダンシングブレイヴ(Dancing Brave 躍動する勇者)は、引退後すぐに大きなシンジケートが組まれ種牡馬となりました。しかし、1987年の秋に奇病で不治の病といわれるマリー病に感染してしまいます。

 この年マリー病に感染したのはイギリス全体で5頭であったにもかかわらず、その内の1頭が稀代の名馬だったのです。マリー病は鳥の結核に似ているといわれ、四肢に痛みが走り、骨膜が腫れ上がる病気です。

 翌1988年生まれの産駒が、2歳・3歳時にほとんど走らなかったことや日々の体調管理の難しさから、管理していたイギリスの牧場やシンジケートは、1991年になると直ぐに、格安で売却先を探したのです。

 日本中央競馬会もダンシングブレイヴの購入について検討しました。正直に言えば、こんな英国の至宝が日本に来ることなど、こうした事情が無ければ有り得ないことです。
 とはいえ、奇病に犯されている馬を輸入することには反対も多かったのですが、最終的には購入を決め1991年に輸入し、日本軽種馬協会に寄贈されました。結果的には、JRAの英断であったと思います。

 後日、イギリスでマリー病罹病後に種付けした産駒からコマンダーチーフ(英ダービー、愛ダービーの勝ち馬)やホワイトマズル(キングジョージ6&QESの勝ち馬)他の重賞ウイナーが出るに及んで、「早計な判断による国家的損失」というイギリスマスコミによる評価がなされるに至りました。コマンダーチーフとホワイトマズルの2頭は種牡馬となり、ダンシングブレイヴの血統を後世に伝えています。(ノーザンダンサー系の中のダンシングブレイヴ系)

 ダンシングブレイヴは、その病の関係で体調管理が難しく、産駒も少なかったのですが、晩年の代表産駒がテイエムオーシャンです。

 ダンシングブレイヴは、1999年8月体調が急変、苦痛に耐えて4本の脚で立ったまま息を引き取るという、誇り高い大往生であったと伝えられています。16歳でした。
 1980年代の世界最強馬でありながら、飛行機に乗り、遠く極東の国にやってきたダンシングブレイヴ。日本の牧場での生活は、彼にとって多少なりとも楽しいものであったと考えたいものです。


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