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HOME   »   スキー  »  [ソチ・オリンピック28] 激戦! バイアスロン30kmリレー
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 2月22日、バイアスロン競技のトリを飾る、男子30kmリレーが行なわれました。最新のバイアスロン競技の要素がぎっしりと詰まった好ゲームでした。

 7.5km×4選手=30kmのリレーです。各選手の試技内容は、

① クロスカントリー2.5km
② 射撃(伏射) 的は5つ
③ クロスカントリー2.5km
④ 射撃(立射) 的は5つ
⑤ クロスカントリー2.5km

 となっています。1人の選手が1周2.5kmのコースを3周し、1周毎にメインスタンド前に帰ってきて、伏射・立射の射撃を行い、最後に次のスキーヤーにタッチして引き継ぐという形式。
 観客は、全ての選手の射撃を見ること(当たり外れが観客からよく判るようになっています)が出来ますから、面白い訳です。

 射撃の基本的なルールは、以下の通り。

⑥ 5つの的(マト)に対して、使える弾は8発。最初に5発のカートリッジをライフルにセットし、5発で5的に当てられれば(1発も外さなければ)、選手は直ぐにクロスカントリーに戻ることが出来ます。

⑦ もし、1~3発外してしまった場合には、残った3の銃弾を1発ずつ、ライフルに篭めます。この装着作業に1発・約10秒を要することから、この10秒がペナルティとなります。2発外せば20秒、3発外せば30秒の時間を要しますから、その分タイムが遅くなる訳です。

⑧ それでも、8発で5つの的を打ち抜ければ、ペナルティは最大30秒程度で済むのですが、8発で5つの的を打ち抜けなかった場合、つまり4発以上外してしまった場合には、討ち抜かれていない的が残ります。
 例えば、4発外した場合には、的がひとつ残ります。この場合には、残った的の数だけ、1周150m程のペナルティコースを回らなければなりません。男子選手ですと平坦な150mコースを走破するのに20秒強を要します。この場合のペナルティタイムの合計は、6~8発の弾込めに10秒×3発=30秒、ペナルティコース1周で20秒の計50秒となります。とても大きなペナルティとなります。

⑨ 射撃で命中率が下がると、前述のようなペナルティが課されますが、だからといって「慎重にゆっくりと撃っている暇」はありません。オリンピックのようなハイレベルのゲームでは全弾命中が珍しくないので、各選手は「スピーディに撃たなくてはならない」のです。「素早く正確に撃ち抜くこと」が求められます。

⑩ 伏射と立射では、2.5kmしか走っていない上に、腹這いになる伏射の方が、命中率が高い(5kmを走り疲労が溜まった上に、不安定な立ち姿勢で撃っていく立射よりも)とされていますが、この点は的の大きさで調整されています。50m離れた的の直径が、伏射は4.5cm、立射が11.5cmとなっているのです。立射の方が、2倍以上大きな的です。
 50m先の4.5cmの的を狙う伏射も、相当難しいと思います。

 さて、この種目の基本的ルールを見てみました。実際のレースに戻りましょう。

1. 19カ国も出場していたこと。

 こうした国対抗のリレー競技として、我が国ではメジャーなスポーツではないバイアスロンに、何カ国位が出てくるのだろうと思っていましたが、何と19カ国!ヨーロッパ17カ国+アメリカとカナダですが、ヨーロッパにおけるこの競技の人気の高さを、再び認識させられました。
 ドイツ・フランス・ロシアといった大国から、スロベニア・ベラルーシ・エストニア・カザフスタンまで、代表チームを編成し出場させてくる競技なのです。

 加えて、出場している選手は概ね10歳を過ぎた頃からバイアスロンを始めているそうです。我が国で言えば小学校の高学年から、ライフルを背負って林間をクロスカントリーしているということになります。その文化の深さを感じさせます。

2. 第1走者のレース内容

 各国チーム第1走者の競り合いも、見応え十分でした。
 カナダチームが先行し、頭書の④立射までトップで来ました。しかし、ここで何と4発外してしまいました。頭書の⑧の例そのもののペナルティ50秒が課されてしまいました。カナダは大きく後退。この後、良く追い上げて7位入賞を遂げましたので、この4発外しが悔やまれるところです。

 射撃場に入ってくる各選手は、射撃場の100m位手前から、ゆっくりと滑ります。各選手がスピードを落としますから、そこでスピードを落とさずに走れば、たくさんのチームを抜けると思うのですが、各選手は決してそんなことはしません。射撃に向けて「呼吸を整えなければならない」からです。
 選手によっては「深呼吸をしたり」「下を向いて繰り返し呼吸をしたり」「静かにストックを置いたり」、自分の体を落ち着かせ、脈拍数を下げ、なるべく平静な状態で射撃の姿勢を取ることが出来るように、練習してきたルーティーンを実行します。
 「動」と「静」のバランスが大切なバイアスロンならではの光景が展開されるのです。
 
 結局、第1走者はノルウェーがトップで、第二走者に引き継ぎました。ノルウェーの第1走者ベイ選手(兄)は、1発も外しませんでした。というか、第1走者の頭書②の伏射では、19チームの内12チームが全弾的中ですから、外すことは大きな負担となるのです。

3. 第2走者のレース内容

 第1走者から第2走者に引き継がれ、ノルウェー・ドイツ・ロシア・オーストリアといった欧州各国に交じって、アメリカチームが上位に付けます。ノルウェーが少しリードして、アメリカ・ドイツが2位を競り合う形。
 バイアスロンについては後進国?のアメリカですが、近年強化が進み、強豪国の仲間入りをしていることが良く分かるレース展開でした。

 ところが、④の立射で大きなミスを犯してしまいます。何と5発外してしまったのです。ペナルティは、弾込め10秒×3発=30秒とペナルティコース2周で20秒×2周=40秒の計70秒。アメリカチームは大きく順位を落とし、結局16位に終わりました。
 トップ争いをしているチームでも、1つの射撃試技で致命的なペナルティを受けるのです。
 
4. 第3走者のレース内容

 ノルウェーチームは第2走者ベイ選手(弟)も首位を守り、10秒強の差で第3走者に繋ぎました。第3走者は、あの「キング」ビョルンダーレン選手です。40歳のビョルンダーレン選手は、今大会も10kmとミックスリレーで金メダルを獲得し、ここまでの6度のオリンピック出場で9個の金メダルを獲得していますから、この30kmリレーで優勝すれば、何と、自己が持つ冬のオリンピックで史上最多金メダル獲得記録の更新・10個目の金メダルが掛かるレースでした。

 ビョルンダーレン選手は、伏射・立射で1発のミスも無く全弾命中と見事な射撃を見せましたが、クロスカントリーで2位のパイファー選手(ドイツ)、3位のマリシュコ選手(ロシア)の追い上げを受け、ドイツチームに2秒差まで追い上げられました。

 全盛期には、クロスカントリーの走力で他を圧倒していたビョルンダーレン選手でしたが、40歳を迎えて、さすがに走力に衰えが見られたのか、あるいは今大会個人20km・個人10km・ミックスリレーに続く4種目目という疲労が残っていたのか、少し意外な展開でした。

5. アンカーのレース内容

 ビョルンダーレン選手が2秒差まで追い上げられたとはいえ、アンカーに今大会個人20km種目の金メダリスト・スベンソン選手を据えるノルウェーチームの優位は動かないものと思われました。

 早々に、ドイツ・ロシアの2チームのアンカーはスベンソン選手に追い付き、3チームが僅差で競り合う形となりましたが、スベンソン選手としては、立射が終わった後の2.5kmのクロスカントリーで、ドイツ・ロシアを引き離す作戦だったのでしょう。個人20kmのレースで、全弾命中・金メダルを獲得していたスベンソン選手としては、当然の作戦でもありました。

 そしてトータル27.5km地点の立射を迎えました。

 ノルウェー・ドイツ・ロシアの3チームが同時に射撃に入りました。ここで、意外なことが起こったのです。
 ノルウェーチームのスベンソン選手が、次々に外します。それを尻目に、ロシア・ドイツの両チームは早々に命中させてクロスカントリーに戻って行きました。

 結局、スベンソン選手は4発外して、150mのペナルティ走まで行なわなければなりませんでした。2.5kmのクロスカントリーしか残っていない27.5km地点での約50秒のペナルティは致命的であり、ノルウェーの優勝は無くなりました。

 個人種目の金メダリストであるスベンソン選手ほどの名手が、この肝心なところで4発も外すというのは考えにくいことですが、やはり「優勝へのプレッシャー」が大きかったのでしょうか。

 さて、ノルウェーチームの脱落を踏まえて、ドイツとロシア=シェンプ選手とシプリン選手の優勝争いとなりましたが、走力に勝るシプリン選手が残り1kmからシェンプ選手を引き離し始めて、3.5秒差を付けたところがゴールでした。
 開催国ロシアチームの見事な金メダルでした。

 ノルウェーチームは、最後の射撃でのミスが祟り、オーストリアチームにも抜かれて4位でのゴール。本命と目されていたノルウェーにとって、惜しまれる射撃失敗でした。

 第1走者でカナダが、第2走者でアメリカが、第4走者でノルウェーが、射撃ミスによるペナルティでメダル争いから後退したことを鑑みると、バイアスロン競技における射撃の重要性がよく分かります。

 一方で、優勝したロシアは4選手で計8発(弾込めペナルティのみ)外していますが、銀メダルのドイツは4選手で1発しか外していなかったことを見ると、射撃のペナルティ(この場合なら80-10=約70秒)をカバーするクロスカントリーの走力も、とても重要であることが分かるのです。

 大激戦であった、ソチ大会バイアスロンの男子30kmリレー。バイアスロンの魅力がたっぷり詰まったレースでしたし、バイアスロンの難しさを痛感させるレースでもありました。
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