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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム98] 「裸足のシンデレラ」 イソノルーブル号
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 1991年の桜花賞トライアル・4歳牝馬特別(現在のフィリーズレビュー)を圧勝したのが、イソノルーブル号です。

 イソノルーブルは、4歳牝特を勝って新馬戦以来5戦5勝・重賞2勝という好成績を引っさげて桜花賞G1に臨みました。当然1番人気でしたが、この年の3歳牝馬は好メンバーが揃い、2番人気のノーザンドライバー、3番人気のスカーレットブーケ、4番人気のシスタートウショウ、5番人気のミルフォードスルーまでの5頭が10倍以下の人気という、思わぬ混戦となりました。

 本来ならば、5戦全勝で、2つの重賞、ラジオ短波賞3歳牝馬ステークスG3でスカーレットブーケに3・1/2馬身差の圧勝、4歳牝馬特別G2で2着に3・1/2馬身差と完勝している馬が居れば一本被り人気になってよいのですが、これだけ人気が割れたのは、イソノルーブルが「抽せん馬」であったことも影響を与えていたのかもしれません。

 「抽せん馬」とは、1歳時点で市場において買い手が付かなかったサラブレッドを、中央競馬会が買い取り、2歳までトレーニングをして「走れるようになった」段階で、希望者に抽選で売却する制度です。「抽せん馬」は必ず中央競馬で走ることが出来るという権利を持っています。

 馬主にとっては、1歳馬の段階で高いお金を出してサラブレッドを購入しても、その後のトレーニング・調教で物にならない或いは故障するといったリスクを回避することが出来ますし、生産牧場、特に中小の牧場にとっては、種付け料や育成にかかった費用をカバーできる、つまり「競走馬生産リスク」を軽減できる制度として、中央競馬において継続して実施されてきました。
 抽せん馬には、馬名の前に○に抽の印が表記されましたし、抽せん馬だけのレースが組まれるなど、中央競馬会による保護施策が打たれてきたのです。

 「抽せん馬」制度は現在でも「JRA育成馬」制度として存続していますが、確か10年位前に○抽の表記は無くなり、一般の市場取引馬と同様の扱いを受けていると思います。

 本稿の主人公イソノルーブルの時代には、まだ○抽の表示がありました。抽せん馬は、どうしても「売れ残った馬」という印象を与えますし、酷い時には「クジ馬」などと呼ばれたりしていましたから、残念ながら少し下に見られる傾向があったのです。

 さて、1番人気でクラシックレース本番を迎えたイソノルーブルは、発走直前に「落鉄」してしまいました。関係者は、10分以上に渡って蹄鉄を打ち直そうとしましたが、出走直前で興奮していたイソノルーブルは、これを受け付けませんでした。
 サラブレッド、ましてや超一流のサラブレッドは、その激しい競走意欲・気性を持って競馬に臨むのですから、レース直前の蹄鉄打ち直しができないのは、無理も無いところです。

 そして、イソノルーブルは蹄鉄が無い状態で桜花賞を走り、5着に敗れました。勝ったのはシスタートウショウでした。

 1番人気の馬が蹄鉄無しで走って5着に敗れ、さらに蹄鉄を付けずに走ることが事前にファンに知らされていなかったために、レース後中央競馬会には抗議が殺到しました。「イソノルーブル落鉄事件」と呼ばれています。

 そして、この時にマスコミで付けられた呼称が「裸足のシンデレラ」だったのです。

 貧しい生まれのシンデレラと王子様の物語、そしてかぼちゃの馬車に向かう途中でガラスの靴を落としていったというストーリーに、見事に絡めた呼称でした。「シンデレラ」という名前自体に「裸足」概念が含まれているので、「裸足のシンデレラ」には重複感がありますが、リズムの良さを勘案して「裸足の」を付けたのでしょうか。

 さて、このレース直前の落鉄が、レース結果にどのような影響を与えたのかは、何とも言えないところですが、
・ 蹄鉄を付けずに走ることが競走能力に大きな影響を与えるものではないとしても、
・ 一方で、蹄鉄を打ち直そうと、出走直前の3歳牝馬を10分間以上にわたって追い回し、複数の人が押さえ込もうとしたこと、は大きな影響を与えたであろうと思います。

 いずれにしても、「落鉄」はイソノルーブルにとって不運なことであったのは、間違いないでしょう。

 騒動の中で桜花賞を走り終えたルーブルは、3歳牝馬最高の栄誉・オークスG1に出走することとなりました。

 桜花賞の結果と、逃げ馬のルーブルが20頭立ての20番大外枠に入ってしまったこともあってか4番人気と人気を下げました。1番人気は、桜花賞馬シスタートウショウでした。

 桜花賞の反省を踏まえて、陣営はレース前にイソノルーブルを興奮させないために、二重のメンコで音を遮断し、ブリンカーを付けるなど、発走直前の手当てを施しました。
 レースでは、気持ちよく走ったルーブルが、シスタートウショウの追い込みをハナ差凌ぎ、オークス馬となりました。一杯一杯ながら見事に粘りきった、素晴らしいカムバックでした。

 秋のエリザベス女王杯では、体調不良から16着と大敗し、故障も見つかってイソノルーブルは競走馬を引退したのです。

 イソノルーブル号、父ラシアンルーブル、母キティテスコ、母の父テスコボーイ、通算成績8戦6勝、重賞3勝。
 8戦6勝・オークス優勝は、なかなか居ない立派な成績です。その安定感も、賞賛に値します。

 父親のラシアンルーブルは、その父がニジンスキー、母の父がバックパサー、母の母の父プリンスキロまで共通という、マルゼンスキーに極めて近い配合でした。この頃、種付料が高かったマルゼンスキーの代用種牡馬として期待された馬でした。その代表産駒がイソノルーブルです。

 430㎏前後の小柄な鹿毛の馬体でしたが、抽せん馬のエースであり、「裸足のシンデレラ」と呼ばれたイソノルーブル。
 フィリーズレビューの季節になると、いつも想い出されるサラブレッドです。
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