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 国際親善試合、日本代表対ブラジル代表のゲームは、現地10月15日、ポーランドのウロツワフ競技場で行われ、ブラジルが4-0で日本を破りました。

 体調十分な時の世界トップチームの強さが感じられるゲームで、彼我の力の差が明確に解るゲームでした。

 ブラジルの勝因、日本の敗因について考えてみます。

1. ブラジル代表メンバーの動きがとても良かったこと。多くのプレーヤーの体調が良かったのだと思います。いつもハードスケジュールの中で試合に出続けているスタープレーヤー達ですが、今回は休養も十分だったのではないでしょうか。もし、スケジュールがそれ程楽なものではなかったとしたら、体調管理が上手く行ったのでしょう。これだけ動きが良いブラジル代表を見るのは、久しぶりでした。

2. スピード、テクニック、運動量のいずれも、ブラジルが大きく日本を上回っていたこと。もともと地力に勝る相手に対して、運動量でも劣っていては勝負になりません。結果として、ブラジルのプレーヤーは縦に動くことが出来ました。パスもドリブルも日本ゴールに向かって行われますので、日本の最終ラインは後退するばかり。あっという間に日本ゴールの10m以内に入って来ます。
 一方、日本のパスは横方向ばかり。前に出すことが出来ないので、仕方なく横にパスをするしかありませんでした。ブラジルの最終ラインは不動。ブラジルという「大きなライオンの周囲を怖そうにぐるぐる回り、時々背中に触るだけ」といった感じでした。

3. 狭い地域でのボールさばきにおいて、ブラジルが圧倒していたこと。中盤および両チームのゴール前におけるイーブンボールへの働きかけのスピード・正確性ともに、ブラジルが遥かに上回っていました。ブラジルプレーヤーの圧力に押されていたのか、日本のプレーヤーは「後ろ重心」の体勢でいることが多く、目の前のボールにさえ、脚を出したり、確保する動きが取れませんでした。ブラジルゴール前で、日本が攻撃している時でさえ、同様でした。ブラジルディフェンダーDFチアゴ・シウバの再三の好プレーは印象的でした。

 以上から、ブラジルの圧勝となった訳ですが、上記1.2.3.を踏まえた試合運びの点では、パウリーニョの1点目が効いたと思います。試合全体として、ブラジルのスピードについていけない日本チームでしたので、ボールを左右に振られると大きなスペースが直ぐに出来てしまいます。

 ここで、ブラジルのミッドフィールダーMFパウリーニョがミドルシュートを放ち、日本ゴール向かって左隅に決まりました。素晴らしいシュートでした。強さ、回転、コースとも完璧なシュートでしたが、一番素晴らしかったことは「決まったこと」です。これで1-0とリードし、ブラジルは「余裕を持って」戦うことが出来るようになりました。(→続きへ)
 
 1970年頃からブラジル代表チームを観てきましたが、余裕を持って戦っている時のブラジルチームはとても強いのです。逆に、慌てた時、焦っている時のブラジルチームは、その力を発揮できません。どんなチームでも同様なのでしょうが、ブラジルチームはこの落差が特に大きいと思います。

 例えば、今年のロンドンオリンピック決勝戦は、対戦相手のメキシコ代表に開始1分で失点し、ブラジルチームは相当焦りました。このオリンピックのブラジル代表チームは、ネイマールを始めとして今回の試合に出ている選手が沢山いたチームでしたが、結局、最後までペースを掴めず敗れました。あのメキシコの先制点は「ここしかない」という絶妙のコースに決まりました。「決まったこと」が大きな意味を持つのです。
 今回の試合では、逆にブラジル・パウリーニョのシュートが良いコースに決まりました。あのシュートより1m右側に飛んでいれば、日本のゴールキーパーGK川島がキッチリ弾いたことでしょう。

 体調・動きが良いブラジル代表チームが余裕を持ってプレーすれば、良いところばかりが出てきます。当然と言えば当然ですが、カカとネイマールが好きなように動く環境が整ってしまうと、日本チームには為す術がありません。

 結果として0-4の敗戦でしたが、ネイマールがエンドラインまで30cmから折り返したゴールがオフサイドという不可解な判定(ネイマール自身がオフサイドであったこと以外には考えられない判定ですが、ネイマールはドリブルで持ち込んできたので不可解)や、日本のゴールポストを叩くシュートが再三あったことを考えると、0-6、0-7でも何の不思議もない一方的なゲームでした。

 日本の攻撃は、概ねブラジルの想定内のもので、チャンスらしいチャンスは、本田と長谷部のシュートでしたが、本田のシュートはコースが消されていて、あの方向にしか蹴れませんでしたので、あとはもっとゴール上方に強く打てば入ったのかもしれませんが、周囲をブラジルDFに囲まれている状況では、容易なことではありません。
 長谷部のシュートは、パウリーニョの先取点と同じくらいのチャンスでしたが、強さ・コースともにパウリーニョのシュートに比して甘かったので、ブラジルのGKジエゴ・アウベスの対応可能エリア内でした。

 もともと地力に勝る相手に完敗した訳ですから、日本代表チームにチームとしての反省点は多くないと思います。個々のプレーヤーが、ブラジルの個々のプレーヤーに負けないパワー・スピード・テクニックを身に付けることが、こうした相手と互角に戦うための最も有効な方策でしょう。相当の差なので容易なことではありませんが。

 そんな中でもチームとしての反省点を挙げれば、第一には「パスの受け方」ではないでしょうか。日本チームのプレーヤーは、止まった状態で「足もとにパス」を欲しがります。このところ戦ってきたレベルの相手であれば、このやり方が通用したのですが、世界トップレベルとなるとそうは行きませんでした。走りながら、自らの前方でパスを受ける形を思い出す必要があります。
 試合の後半には、横に出すしかなかったパスでさえコースを読まれて、カットされていました。ブラジルにとっては、いつでもボールが取れる、楽な戦いになっていました。

 第二は、DFラインの動きです。この試合のブラジルチームのように、もの凄いスピードで縦にゴールに迫ってくる攻撃に対して、最終ラインの4人がサーッと下がると、いつの間にかエンドラインから3m位のところに4人が等距離・直線に並ぶという態勢になってしまいます。この試合では、何回かこの態勢が見られました。エンドラインに踵が付くような状態で、最終ラインが形成されていても無意味・有害ですので、こうしたハイレベルなチームを相手にする場合のDFの動きを再構築する必要があります。

 ブラジル代表チームは、常に世界のサッカーをリードする存在です。FIFAワールドカップ最多優勝5回の記録も持っていることは周知のことです。近時でも、1990年代半ばから2000年代前半にかけての10年間余りはブラジルの時代でした。

[近時のワールドカップ決勝]
・1994年アメリカ大会 優勝ブラジル 準優勝イタリア
・1998年フランス大会 優勝フランス 準優勝ブラジル
・2002年日本・韓国大会 優勝ブラジル 準優勝ドイツ
・2006年ドイツ大会 優勝イタリア 準優勝フランス
・2010年南アフリカ大会 優勝スペイン 準優勝オランダ

 それが、2000年代の半ばから、ブラジル代表の相対的な地位が低下しました。2007年以降の世界サッカー界は、スペインの時代になっています。こうした中で2014年にはワールドカップ・ブラジル大会が開催されます。地元の開催でもあり、これまで地元で優勝したことが無いので、ブラジルとしては6回目の優勝を地元で飾りたいと、当然考えています。ところが、この数年のブラジル代表の戦績は果々しいものではなく「セレソン*どうした」という感じでした。(*ブラジル代表プレーヤーの敬称)

 このまま、現世界チャンピオンのスペインや常に世界最高レベルの代表チームを送り続けるドイツが、2014年のワールドカップでも主役になるのではないか、といった見方もありました。その点からは、今回のゲームは単なる親善試合を超えて「ブラジル復活」を感じさせるものであったと思います。素晴らしいレベルのサッカーを披露してくれたという意味で、ブラジル代表には感謝しなければなりません。

 若手中心とはいえ、フランス代表チームをアウェーで破った日本代表チームは弱いチームではありません。その日本チームを赤子の手を捻るように破ったのですから、セレソンのチーム造りは着々と進んでいるのでしょう。

 2014年ワールドカップ・ブラジル代表チームの幹になるであろう今回のチームを観ると、「ブラジル代表も大きくなった」という感じです。サイズが全体に大型になりました。1990年代以降、ブラジル代表チームは、DFにはルシオのように大きなプレーヤーが居ましたが、例えば1994年アメリカ大会優勝の時のフォワードFWロマーリオやベベトは、小柄なプレーヤーでした。

 今回のチームではネイマールが小柄な方になるのでしょうが、それでも日本のプレーヤーより一回り大きい感じです。伝統的な高いテクニックを保持したまま、大型化しているチームは、ドイツや北欧の大型チームに当たり負けることも少なくなり、パフォーマンスが向上すると思います。

 このゲームのブラジル代表チームと先のユーロ2012を制したスペインチームが真剣勝負を戦ったらどうなるでしょうか。個々の選手の運動能力は互角でしょう。戦術的には、ドリブルを多用するブラジルと、パスサッカーのスペインですから、全く異なりますが、現時点では双方打ち消しあって互角に観えます。
 互角の展開の中でスペインMFシャビからの縦パスがゲーム中1回だけ決まり、1-0でスペインが勝ちそうです。シャビとイニエスタの豊富な経験量が、彼我の差なのでしょう。まだ現時点では、スペイン代表の方が僅かに強いと思いますが、もちろん今後1年以内に逆転する可能性が十分ある差だとも思います。

 Jリーグ創成期、ジーコが日本に居たころ、インタビューを受けていました。「常時600人~700人のプレーヤーが海外のチームでプレーしている」と。この650人のプレーヤーが稼ぎ出す外貨の金額は、無視できない水準です。サッカーはブラジルの大人気スポーツであり、かつ「ブラジルの一大産業」なのでしょう。
 その650人の海外組とそれよりもっと多い国内組から選抜される「セレソン」は、常にブラジルの栄光を背負っているのです。

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