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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム17] 天皇賞(秋) ギャロップダイナとシンボリルドルフ
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 1905年から全国各地の競馬場で開催されていた帝室御賞典競走を、1937年・昭和12年に日本競馬会が設立されたことを契機にして、第一回帝室御賞典競走として統合・設立されたレースが、天皇賞に連なるレースです。第一回のレースは東京競馬場2600mコースで行われ、出走条件が3歳以上の牡馬・牝馬であった点(4歳以上の古馬限定で馬なかった)が意外な点です。
 1938年秋の帝室御賞典競走から、英国のゴールドカップ競走を手本として距離が3200mに延長され、4歳以上の古馬限定レースとなりました。

 ちなみに、この日本競馬会による帝室御賞典は、第一回が1937年12月の東京競馬場、第二回が1938年5月の阪神競馬場2700mコースでの開催となっていて、当初は東京・阪神両競馬場での開催でした。
 1944年、関西地区最古の競馬場である阪神競馬場(当初の名称は鳴尾競馬場)が海軍に接収されたために、会場を京都競馬場に移し、能力検定競走として実施されました。この後、春の会場は京都競馬場となりました。
 1945年、1946年は戦争の関係から、東京・京都ともに開催されませんでした。

 戦後1947年に復活し、名称も「天皇賞」になりました。「秋の天皇賞」は、「春の天皇賞」とともに、距離3200mで実施され、勝ち抜け制のレースとして一体運営されました。今考えると不思議なこととも思えるのですが、春・秋のどちらの天皇賞でも、一度優勝すると、その後どちらのレースにも出走できなくなるルールです。
 例えば、三冠馬シンザンは1965年秋の天皇賞に勝ちましたので、以降春・秋の天皇賞の両方のレースに出走できなくなりました。

 「天皇賞を正賞とするレース」ですから、当初から競馬関係者の思い入れの強い大レースでした。3歳馬限定の5つのクラシックレースとは別の、古馬限定レースの最高峰として、1度は勝ちたいレースとしての位置付けが揺らぐことはなく、「ひとつ勝てるとしたら、天皇賞と日本ダービーのどちらを選ぶか」というテーマは、再三新聞紙上を賑わす話題でした。

 こうして、古馬最高峰のレースとして、古馬の力量を試す長距離3200mのレースとして、輝かしい歴史を積み重ねてきた「秋の天皇賞」は、シンザンが優勝して以降、18年間連続して1番人気馬が勝てないという「荒れるレース」としても有名でした。春の天皇賞が比較的本命サイドのレースであったことと好対照のレースだったのです。

 この秋の天皇賞が、大きく変わる要因となった制度の変更が、1980年代に次々と実施されました。
① 1981年勝ち抜け制の廃止
② 1984年実施距離を3200mから2000mに短縮
③ 1987年3歳馬に門戸を開放

 この3つの制度変更は、いずれも大きな影響を齎しましたが、やはり1984年の距離短縮が最も大きな変更でした。
 中央競馬会肝いりの国際競走としてジャパンカップが開設されたのが、①の年1981年でした。例年11月下旬に開催されていた秋の天皇賞は、この年から開催時期が繰り上がり10月下旬の開催になったのです。有力馬に、秋の天皇賞とジャパンカップの両方に挑戦してもらうための措置であったと思います。

 この2つの大レースに挑戦する有力馬の関係者からの「3200mのレースと2400mのレースを1か月間に連戦するのはコンディショニングの点から難しい」という意見と「中距離の大レース創設」を希望する声に応える形で、秋の天皇賞の距離が1984年に2000mに短縮されたのでしょう。この年から、「秋の天皇賞」は「天皇賞(秋)」となり、連動する形で「春の天皇賞」も「天皇賞(春)」となったのだと思います。

 「距離も3200mと同じで、どちらも天皇賞ですが実施時期が異なるという扱い」から、異なるスペックのレースとしての天皇賞(秋)2000mと天皇賞(春)3200mになったのですから、極めて大きな変更であったと思います。

 この秋の天皇賞の距離短縮については、実施当初反対意見が多く出されました。歴史と伝統を誇る大レースですから「そもそも東京競馬場3200mの天皇賞が無くなることへの不満」「古馬の大レースは長距離で争われるべきといった意見」が数多く出された訳です。レースの性格を根本から変えてしまう変更でしたので、反対意見続出もやむを得ないことでした。この反対論は、その後の中距離レース全盛時代の到来に伴い、現在では聞かれなくなりました。

 また、距離短縮そのものよりも「東京競馬場2000mコース」での開催に対する疑問の声も多く出されていて、この点は現在でも指摘が続いています。東京2000mは、スタートから最初のコーナー(第二コーナー)までの距離が短く、また2002年までは第二コーナーの形状も極端な左急カーブであったことから、外枠の馬に相当不利なコースでした。2003年に第二コーナーの形状が見直されましたが、それでも依然として外枠は不利と言われています。

 有名な1991年のメジロマックイーンの1着入線から18着(最下位)への降着というレースでは、圧倒的なスピードを誇った同馬が、大外枠スタートから一気に第二コーナーに先頭で突っ込んだため、内枠の馬(他の全ての出走馬)が詰まる形になって、各馬の騎手が手綱を引き、中腰で立つような姿勢になったことから、走路妨害と見做されたための降着でした。

 とはいえ、4角を回ってからも差は拡大する一方で、ゴール前では5馬身以上の差になっていたことを考えると、メジロマックイーンの力量が圧倒的であったことも事実なので、このような異様なレースを生んだ要因のひとつが、東京2000mコースであったことも紛れもない事実だと思います。

 大レースは枠順による有利不利が無いコース(少ないコース)で開催すべし、というのは正論ですので、今後も連続した改善施策の実行が必要でしょう。

 さて、今回採り上げる競走馬は、ギャロップダイナ号とシンボリルドルフ号です。(→続きへ)

 
 
 ギャロップダイナは1985年の勝ち馬です。天皇賞(秋)が2000mになってから2年目のレースで、前年の三冠馬シンボリルドルフが2着に敗れたレースです。このレースについても、前述の「外枠の不利」があったのでしょうか。

 ギャロップダイナは、父ノーザンテースト、母アスコットラップ。生涯成績は42戦10勝。重賞勝ちは、1985年天皇賞(秋)G1、1986年東京新聞杯G3、同年安田記念G1の3勝です。つまり、1985年の天皇賞(秋)に出走してきた段階では、特別レースには勝っているものの重賞には縁が無い馬でした。

 この1985年10月27日のレースは、三冠馬にして3歳時に有馬記念G1に勝ち、4歳春に天皇賞(春)G1も制して既に5冠馬であったシンボリルドルフが、史上最強馬の呼び声も高く出走してきたレースでした。
 しかし、シンボリルドルフは大外17番枠を引いてしまいました。しかも単枠指定です。外枠は極めて不利といわれる東京2000mのレース。それでもファンは「ルドルフなら関係ない」とばかりに、圧倒的な一番人気に支持しました。

 スタート直後、ルドルフの岡部騎手は無理に先行しようとせずに、後方に付け3コーナーから4コーナーにかけて、徐々に先行集団に接近します。4コーナーでは、先頭グループにまで進出していたシンボリルドルフは、直線入り口で先頭に立ちます。

 ここで、ルドルフをマークしていたウインザーノットとニホンピロウイナーの中距離のスペシャリスト2頭が襲い掛かります。一度は2頭に並ばれたルドルフですが、さすがに最強馬、二の脚を使いじりじりと差を付けて1/2馬身ほどリードしました。これで、レースは決まったと思った残り100m、外から飛んできたのがギャロップダイナでした。

 シンボリルドルフとギャロップダイナの間には前述の2頭が居ましたので、お互いの距離が離れていて、ルドルフから見えなかったのか、既にルドルフには差し返す脚が残っていなかったのか、ギャロップダイナがシンボリルドルフに1/2差を付けたところがゴールでした。

 単勝88.2倍というのは、おそらく現在でも天皇賞(秋)の単勝最高配当でしょう。このレースに勝って以降、ギャロップダイナは生まれ変わったかのように中距離路線で強さを発揮しました。翌1986年の春、1600mの東京新聞杯G3と安田記念G1を勝ち、秋も天皇賞(秋)4着、有馬記念を2着と健闘して引退しました。ギャロップダイナのこのレース後の活躍を見ると、このレースが決してフロックではなく、本格化の最初のレースであったことが判ります。

 シンボリルドルフの方は、このレースの後この年のジャパンカップG1、有馬記念G1と連勝しました。この時期のルドルフの調子が悪かったとは思えない成績です。では、何故この天皇賞(秋)でシンボリルドルフは敗れたのでしょう。

 大外17番枠の影響でしょうか。私は、この大外枠は3コーナーから4コーナーにかけて先頭集団に追いつくために脚を使ったという意味で影響したけれども、最大の要因ではなかったと考えています。
 翌1986年の天皇賞(秋)は、大外16番枠のサクラユタカオーが勝っていますし、2003年には大外18番枠のシンボリクリスエスが優勝しています。シンボリルドルフも大外とはいえ、この2頭と同じように勝っていても何の不思議もないと思うのです。

 シンボリルドルフが敗れた最大の要因は「ヨーイドンの展開になったこと」だと考えます。このレースは、ギャロップダイナ、シンボリルドルフ、ウインザーノット、ニホンピロウイナー(3着は2頭同着)の上位入着馬がいずれも上がり3ハロン33秒台の脚を使っています。つまり、残り600mからヨーイドンのレースだったのです。

 強い馬というのは「ゆるみないペースのレースでも、最後の脚が使える馬」です。逆に、余力を残した状態で短い距離を走るのであれば、3ハロン33秒台で走れる馬は沢山居るということです。
 ヨーイドンでしたから、シンボリルドルフも直線で他の馬に大きな差を付けることが出来ませんでしたが、何とか僅かに先頭に立った瞬間に、「生涯最高の脚」をギャロップダイナが使ったのでしょう。このレースのタイムは1分58秒7のレコードでした。

 こうなると「東京2000mのレースは怖い」ということになります。展開のアヤにより、4角からヨーイドンの競馬になれば、多くの馬に勝つチャンスが生まれるということです。

 シンボリルドルフにとっては、生涯最も悔いが残るレースでした。ルドルフは7冠馬(皐月賞、日本ダービー、菊花賞、天皇賞(春)、ジャパンカップ、有馬記念2回)ですが、この天皇賞(秋)を制していれば8冠でした。日本のレースでは15戦13勝と2回しか負けていないのですが、3歳時に負けたジャパンカップは4歳時にリベンジに成功しましたので、結局勝てなかった唯一の大レースということになります。

 常に繰り返される「日本競馬史上最強馬はどの馬か」の議論に、決着をつけることが出来ない最大の要因のひとつとなっているのが、1985年の天皇賞(秋)競走だと思います。

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