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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム112] アメリカのクラシック三冠馬(その1)
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 2014年5月21日の稿で、「アメリカのクラシック三冠レース」について触れました。今度は、三冠馬について書いてみようと思います。

 アメリカの三冠レースは、ケンタッキー・ダービー、プリークネス・ステークス、ベルモント・ステークスの3つのレースです。
 この3レースは、毎年5月~6月にかけての5週間という短い期間に集中して実施されることや、その距離が、一番短いプリークネス・ステークス1900m、一番長いベルモント・ステークス2400mと500mの差しかない(例えば、イギリスの三冠レースなら2000ギニー・1600mとセントレジャー・2900mと1300m差)ことを考え合わせると、「強くて好調な馬」であれば、一気に3レースを連勝しそうですので、春~夏にかけて3レースが実施されるイギリスや日本に比べて、より多くの三冠馬が誕生しそうに感じます。

 しかし実際には、1875年に3レースが揃い、現在に至るまで140年近い歴史があるアメリカの三冠レースにおける三冠馬は、僅かに11頭しか居ないのです。

[アメリカの歴代三冠馬 11頭]
・1919年 サーバートン
・1930年 ギャラントフォックス
・1935年 オマハ
・1937年 ウォーアドミラル
・1941年 ワーラウェイ
・1943年 カウントフリート
・1946年 アソールト
・1948年 サイテーション
・1973年 セクレタリアット
・1977年 シアトルスルー
・1978年 アファームド

 一方、日本競馬の三冠レースは1939年に揃い現在まで75年となりますが、7頭の三冠馬を生んでいますから、約10年に1頭のペースです。一方のアメリカは、約12.5年に1頭ということになり、この点では日本競馬より誕生確率が低いことになります。

[日本の三冠馬 7頭]
・1941年 セントライト
・1964年 シンザン
・1983年 ミスターシービー
・1984年 シンボリルドルフ
・1994年 ナリタブライアン
・2005年 ディープインパクト
・2011年 オルフェーヴル

 加えて、アメリカでは1978年のアファームド号以降三冠馬が誕生していませんから、直近の35年間三冠は達成されていないのです。日本では、1978年以降5頭の三冠馬が生まれていますから、対照的とも言えます。

 アメリカ競馬のクラシック三冠制覇は、近時大変な難関となっているのです。

 イギリスや日本では、3冠最後のレースであるセントレジャー・ステークスや菊花賞の優勝が、3000m前後の長距離レースであり、2400mのダービー競走との距離差が大きいことから、血統面も含めて、三冠達成の難関となっていると言われます。
 実際、イギリスでは2012年に、2000ギニーとダービーに連勝したキャメロット号が、勇躍セントレジャーに挑みましたが2着に敗れ、1970年のニジンスキー号以来43年振りの三冠馬誕生はなりませんでした。(イギリスでも久しく三冠馬が誕生していません)

 では、アメリカ競馬において三冠馬誕生への最大の壁になっている要素は、何なのでしょう。

① 二冠馬が少ないのか?
 三冠馬に挑戦する条件としての二冠馬自体が少なければ、三冠馬誕生の可能性は低くなります。例えば、「適正距離に強く拘る競馬」になっていて、三冠レース全てに挑戦する馬が少ないといったケースです。

 この点は違いました。どちらかというと二冠馬は多いと思います。
 1978年にアファームド号が三冠を達成していますから、1979年~2013年の35シーズンを見てみます。
 「19頭の二冠馬」が誕生しています。35シーズンで19頭ですから、二冠馬誕生確率は54%以上。2シーズンに1頭以上の二冠馬が誕生しているのですから、少ないとは言えません。

 そして、「ある意味では驚くべきこと」に、これら19頭は全て三冠取りに失敗しているのです。クラシック二冠馬という名馬19頭が、揃いも揃って残り1冠を取り損ねるというのも、不思議な感じです。

② 取り損ねたレースは?
 前述の19頭の二冠馬の失冠レースを見てみます。三冠レースの中で、勝てなかった1つのレースということです。

[1979年以降のアメリカ二冠馬19頭の失冠レース]
・ケンタッキー・ダービー 5頭
・プリークネス・ステークス 2頭
・ベルモント・ステークス 12頭(競走中止1、出走取消1)

 ベルモントSを取り損ねている二冠馬が12頭と最多でした。(1989年の二冠馬サンデーサイレンス号もベルモントSで2着でした)

 もちろん、現実的にはケンタッキーDとプリークネスSを連勝していなければ、三冠への挑戦権は無いのですが、後から振り返ってみれば「あの時ケンタッキーDに勝っていれば三冠だった」という見方もあるでしょうから、こうした比較としました。
 それにしても、1979年以降の二冠馬が1頭残らず三冠レース全てに挑戦している(出走取消1頭)というのは、凄いことです。
 それだけ三冠レースの価値が重いということであり、アメリカのホースマンにとってもクラシックレースというのは極めて重要なレースであることがよく分かる事実です。

 いずれにしても「ベルモントSが最大の壁」であることは明らかです。

 今年2014年も二冠馬カリフォルニア・クローム号がベルモント・ステークスで敗れ、三冠達成はなりませんでした。

 前述のように、2400mのベルモントSはアメリカ・クラシック三冠レース中最長のレースですが、2000mのケンタッキーDより400m長いだけです。無論、この400mが大きく影響するという馬も存在するのでしょうが、二冠馬としてベルモントSに挑戦した12頭が全て400mの影響を大きく受けたとは考えにくいと思います。

 強いて原因を考えれば「5週間で3レースという過密なスケジュールに伴う疲労残り」でしょうか。
 世界の競馬をリードする存在であるアメリカ競馬ですから、毎シーズン強い3歳馬が複数登場します。そしてしのぎを削るのです。ケンタッキーDとプリークネスSを連勝した二冠馬に対しても、同期のライバルたちが手薬煉を引いてベルモントSで待ち受け、最後の1冠は渡さないというシーズンが、数多く見られるのです。

 1979年のスペクタキュラービッド号はベルモントSで3着となり三冠を逃しましたが、古馬になってからも勝ち続け、通算30戦26勝、G1を13勝というアメリカ競馬史上屈指の葦毛馬です。

 前述1989年のサンデーサイレンス号もベルモントSで2着と敗れ三冠はなりませんでした。ベルモントSでサンデーを破ったのは、ライバルのイージーゴア号でした。サンデーサイレンスとイージーゴアは、三冠レースの1・2着を分け合い、プリークネスSは鼻差でサンデーが勝つという「凄まじいライバル関係」だったのです。
 サンデーサイレンスは、その後種牡馬として日本に輸出され、日本競馬を大きく変えて行く大活躍を展開したことは、記憶に新しいところです。

 2002年の二冠馬ウォーエンブレム号もベルモントSで8着に敗れました。ウォーエンブレムは後に、種牡馬として日本に輸出され、ブラックエンブレム(秋華賞勝ち馬)、ローブティサージュ(同、阪神JF)等の産駒が居ます。

 2004年の二冠馬スマーティジョーンズ号の通算成績は9戦8勝。唯一の敗戦がベルモントSの2着でした。

 こうした、とても強い二冠馬が次々と挑戦してきたにもかかわらず、アメリカ・クラシック三冠馬は1978年を最後に誕生していません。
 
(「その2」では、アメリカの個々の三冠馬について見て行きたいと思います)

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