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HOME   »   陸上競技  »  [男子100m競走] 白色人種・黄色人種に立ちはだかる10秒の壁
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 今年2012年のロンドン・オリンピック男子100m競走は、ウサイン・ボルト選手が、9秒63のオリンピック新記録で優勝、オリンピック2連覇を飾りました。

 人類が100m走で初めて10秒の壁を破ったのは、1968年メキシコ・オリンピック決勝のジム・ハインズ選手で、記録は9秒95でした。以降人類は、44年をかけて0.37秒を短縮し、現在の世界記録はボルト選手の9秒58となっています。わずか0.37秒という見方もあると思いますが、ゴール前の0.37秒ですから5m以上の差ですので、大きな短縮と見ることもできます。

 人類が100m競走10秒の壁に辿りついたのは、1960年6月です。西ドイツのアルミン・ハリー選手が10秒0のタイムをたたき出したのです。ハリーは同1960年8月のローマ・オリンピック決勝レースでも10秒0で優勝しています。続く1964年の東京オリンピックでは、アメリカのボブ・ヘイズ選手が、やはり10秒0で優勝しました。この8年間位は、10秒の壁が破れなかったのです。

 ちなみに、この頃は現在と違い「手動計時」でした。ストップウオッチを持った人間(計測員)が、目視で記録を測るのです。別稿で「手動計時について」は、少し記載しましたので、ご参考にしてください。

 この頃は我が国でも10秒1のタイムが3人のランナーによって記録されていますし、世界大会では10秒0のタイムが何回か記録されましたが、なかなか9秒9は出ませんでした。いわゆる「10秒の壁」が長く存在したのです。(この頃は10分の1秒表示でした)

 そして、1968年メキシコ・オリンピック決勝レースで、アメリカのジム・ハインズ選手がついに10秒の壁を破り、9秒95の記録を打ち立てたのです。(別稿「手動計時について」ご参照)

 しかし、その後のオリンピックOLPでは、なかなか10秒の壁が破れませんでした。1972年ミュンヘンOLPはワレリー・ボルゾフ選手(ソ連)が10秒14で優勝、1976年モントリオールOLPはヘイズリー・クロフォード選手(トリニダード・トバゴ)が10秒06で優勝、1980年モスクワOLPは、アラン・ウェルズ選手(イギリス)が10秒25で優勝、と10秒の壁は厳然として存在しましたので「ハインズの記録は、空気が薄い高地(メキシコシティ)の記録」と言われたりしました。ちょうど、走り幅跳びのボブ・ビーモン選手の8m90㎝という驚異的世界記録が生まれていたことも影響したのかもしれません。

 こうして、ハインズに続いてオリンピックで10秒を切るランナーは、カール・ルイス選手(アメリカ)を待たなくてはなりませんでした。1984年のロサンゼルスOLPで、カール・ルイスは9秒99のタイムで優勝しました。そして、多くの壁がそうであるように、カール・ルイスが破った壁は、次々と他の選手にも破られ、現在までに80人以上のランナーが10秒の壁を破っています。

 1988年ソウルOLPはカール・ルイスが9秒92で連覇、1992年バルセロナOLPはリンフォード・クリスティー選手(イギリス)が9秒96で優勝、1996年のアトランタOLPはドノバン・ベイリー選手(カナダ)が9秒84で優勝、2000年のアテネOLPはモーリス・グリーン選手(アメリカ)が9秒87で優勝といった形で、9秒台でなければオリンピックや世界選手権では勝てない、あるいはアメリカやジャマイカといった強国であれば、9秒台でなければ代表にもなれないという時代が訪れました。

 しかし、こうした世界の記録更新ラッシュとは無縁の形で、日本記録は1998年の伊東浩司選手がアジア大会で記録した10秒00のままです。伊東選手が記録してから14年間の長きに渡って、日本記録は更新されていないのです。これは、いわゆるアジア人(モンゴロイド)についても同じで、モンゴロイドの100m競走の最高記録も、いまだに伊東選手の10秒00なのです。

 そして、実は、白人(コーカソイド)も2010年7月まで、10秒の壁を破っていなかったのです。意外なことです。前述のように、1960年ローマOLPの西ドイツ、アルミン・ハリーから1980年のモスクワOLPアラン・ウェルズ(イギリス)まで、白人選手は度々オリンピックチャンピオンになっていましたので、世界記録が10秒を破り、黒人(ネグロイド)ランナーがどんどん記録を伸ばしている状況下、白人選手も着々と記録を伸ばしてはいるものの、黒人選手には追いついていないものだと思っていたのですが、実際には白人選手も10秒の壁を破ったのは、つい最近の2010年だったのです。

 白人ランナーで初めて9秒台をマークしたのは、フランスのクリストフ・ルメートル選手で、2010年の7月のことでした。ルメートルは、その後も記録を更新し、現在は9秒92まで伸ばしています。今年のロンドンOLPでも決勝進出が期待されましたが、なりませんでした。

 ここで、再び注目したいのは、1968年のハインズによる10秒の壁突破から、42年の歳月をかけて白人ランナーも10秒の壁を突破したのですが、その後ルメートルに続く白人ランナーが出てきていないのです。

 現時点で10秒を切った、世界中の80人余りのランナーの中で、上記のルメートルとオーストラリアのパトリック・ジョンソン選手(アイルランド人の父とアボリジニの母を持ちます。2003年に9秒93を記録しました)の2人以外は、全て黒人ランナーなのです。

 これは、100m競走においては人種的に黒人ランナーが圧倒的に優位にあることを明確に示しています。筋肉の質、体型等、その優位性の要因は多々あるのでしょうが、今後も100m競走、200m競走、400m競走の陸上競技短距離競走においては、黒人ランナーの時代が続くのでしょう。

 一方で、アジア系民族にとって「10秒の壁」がとても厚いものだとしても、現在の日本のトップ・スプリンター陣が、伊東選手の記録を14年間も破れないというのは、残念な気がします。2013年には、日本人ランナーの9秒台の走りを是非観てみたいものだと思います。


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