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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム113] アメリカ・クラシック三冠馬(その2)
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 「その2」では、個別の三冠馬について観て行きましょう。

 前稿の通り、アメリカ競馬においては過去に11頭の三冠馬が誕生しました。年代順に並べると
① 1919年 サーバートン
② 1930年 ギャラントフォックス
③ 1935年 オマハ
④ 1937年 ウォーアドミラル
⑤ 1941年 ワーラウェイ
⑥ 1943年 カウントフリート
⑦ 1946年 アソールト
⑧ 1948年 サイテーション
⑨ 1973年 セクレタリアト
⑩ 1977年 シアトルスルー
⑪ 1978年 アファームド

 こうして11頭を並べてみると、1919年~1948年という「第一次世界大戦終了直後から第二次世界大戦終了直後の期間」に8頭の三冠馬が誕生し、1970年代に3頭が誕生するという、「奇妙な集中」が観られます。逆に、1950年代、1960年代、1980年代、1990年代、そして21世紀には、1頭の三冠馬も誕生していないのです。不思議なことです。これだけはっきりとした傾向ですので、おそらく明快な理由が存在するのでしょうが、残念ながら分かりません。

 さて、サーバートンからサイテーションに到る8頭については、名前は聞いたことがあるものの、私にとってリアルタイムな情報ではないので、ここではセクレタリアトからの3頭について触れたいと思います。

① セクレタリアト号(Secretariat、意味:事務局・書記職)

 我が国に欧米競馬の情報が、相当量定期的に入るようになった1970年代、「アメリカに史上最強馬現る」として報道されたのがセクレタリアト号でした。
 特に、三冠最後のレース・ベルモントステークスの快走、2着に31馬身の大差を付けたレースが再三テレビ放送されたのです。テレビ画面上に2着馬を入れることが、とても難しいという、衝撃的な絵でした。
 530kgを超える雄大な馬体、2m近い胸囲(その後、これ程の胸囲のサラブレッドを見たことがありません)、明るい栗毛、強烈なギャロップから「ビッグレッド」の異名を取りました。

 セクレタリアト号、父ボールドルーラー、母サムシングロイヤル、母の父プリンスキロ。通算成績21戦16勝2着3回3着1回4着1回。

 素晴らしい成績ですが、セクレタリアトの名を「アメリカ競馬史上最強」にまで押し上げたのは、「勝ちっぷり」であったと思います。
 ケンタッキーダービー(2000m)は1分59秒4のレコード勝ち。(ノーザンダンサーが保持していた2分丁度を更新)
 プリークネスステークス(1900m)は時計が壊れてしまい、手動計時であるため公認ではないものの1分53秒0のレコード勝ち。
 ベルモントステークス(2400m)は31馬身差を付けて2分24秒0のレコード勝ち。

 ベルモントステークスとプリークネスステークスの記録は、30年以上を経た現在でも、「ダートの同距離の世界最高記録」です。

 ダート競馬において、セクレタリアトの競走能力を超えるサラブレッドは、3歳馬・古馬の区別無しに、現在に到るまで登場していません。史上最高のサラブレッドの1頭であることは間違いないでしょう。

 そもそも血統的にも、父ボールドルーラーはアメリカのリーディングサイアー8度を誇る名種牡馬ですし、父の父ナスルーラ、その父ネアルコとくれば、本ブログにも再三登場する「世界の名血」です。母のサムシングロイヤルも、その繁殖成績の良さで極めて高い評価を得ていますから、セクレタリアトは超良血馬ということになります。

 ボールドルーラーの後継と目され、「史上最強馬」として鳴り物入りで種牡馬となったセクレタリアトですが、その種付料も破格でした。「種付け1回1億2000万円」という史上最高価格だったと記憶しています。しかも、不受胎の時にも返却無しでした。
 セクレタリアトが種牡馬になるまでの世界最高は、イギリスの三冠馬ニジンスキーの9500万円でしたから、セクレタリアトは大幅に記録を更新したことになります。(どちらも、極めて高額ですが)

 しかし、クレイボーン牧場のボールドルーラーが居た馬房で種牡馬生活を始めたセクレタリアトは、期待に反して思ったほどの成績を残すことが出来ませんでした。
 レディースシークレット(45戦25勝、1986年の北米年度代表馬)やリズンスター(11戦8勝、プリークネスS・ベルモントSの二冠)、ヒシマサル(13戦5勝、きさらぎ賞、毎日杯)といった産駒を送り出しているのですから、通常であれば立派な成績だと思いますが、「競走成績との比較」において、全く物足りないものだったのでしょう。
リーディングサイアーに輝くこともありませんでした。

 あまりに高額な種付料だったために、初年度の種付けが5頭に留まったと記憶しています。この種付け機会の少なさも、種牡馬成績不振の要因のひとつのように思います。

② シアトルスルー号(Seattle Slew、意味:共同馬主2人の出身地を並べた)

 セクレタリアトの興奮冷めやらぬ1977年、アメリカに再び三冠馬が誕生しました。デビュー戦の4着を含めて、三冠レースに臨む前に3敗していたセクレタリアトとは異なり、シアトルスルー号は6連勝でケンタッキーダービーを迎えたのです。

 そして、プリークネスS、ベルモントSと危なげなく勝利して「9戦無敗の三冠馬」が誕生しました。
その頃の写真が我が国でも報道されていましたが、黒鹿毛の黒光りする筋骨隆々の馬体で、特に前駆の発達が著しいものでした。「日本にはこれ程の馬体のサラブレッドは存在しない」と感じました。

 シアトルスルー号、父ボールドリーズニング、母マイチャーマー、母の父の父ラウンドテーブル、通算17戦14勝2着2回4着1回。

 父ボールドリーズニングは、その名前からも分かるように、ボールドルーラー系(孫)でしたが、それ程有名な種牡馬ではありませんでした。母マイチャーマーも華々しい活躍を見せる一族ではありませんでしたから、シアトルスルーはあまり期待されていなかったと言われています。
 加えて、後ろ足が外向、頭が大きく尻尾が短いと、外観もパッとしなかったのです。選抜セリ市への認められず、一般セリ市において1万7500ドルで落札されたと伝えられます。その後の活躍からは考えられない安価でした。

 9連勝で三冠馬となったシアトルスルーでしたが、その後、馬主と調教師の間で出走させるレースについて対立が起こりました。
 強豪馬を保有したことが無い馬主は、高額な招待を提示されると、ローテーション他を無視して出走させてしまうという事例の典型として、ベルモントSから間が無いスワップスSでシアトルスルーは4着に敗れてしまいます。生涯初の敗戦でした。

 その後4歳まで走ったシアトルスルーは、引退して種牡馬となりました。種牡馬成績は優秀で、1984年には北米リーディングサイアーを獲得しています。種牡馬という点では、セクレタリアトを凌いだのです。
 ケンタッキーダービーを制したスウェイル、ベルモントステークス馬のエーピーインディ、ブリーダーズカップ勝ち馬のカポーティなどが代表産駒です。日本でも、タイキブリザード(安田記念)、ダンツシアトル(宝塚記念)などが活躍しました。

③ アファームド号(Affirmed、意味:動詞「断言する」の過去形)

 前年にシアトルスルーが三冠を実現した翌年1978年に、2年連続で三冠を制したのがアファームド号です。「荒法師」という雰囲気のシアトルスルーに対して、「優等生」という感じがアファームドには漂っていたと思います。

 滅多に誕生しないはずの三冠馬が2年連続で登場するというのは不思議なことですが、日本でもミスターシービー(1983年)とシンボリルドルフ(1984年)が連続して三冠馬になっていますから、こうしたリズムというのも存在するのでしょう。

 アファームド号、父イクスクルーシブ・ネイティブ、母ウォントテルユー、通算成績29戦22勝。G1レースを14勝し、当時の獲得賞金世界一記録を更新。

 父イクスクルーシブ・ネイティブは、レイズアネイティブの仔、ネイティブダンサーの孫に当たります。母の血統も含めて、超良血とは言えない血統でしたが、予想に反して?素晴らしい成績を残したのです。

 アファームドは、ケンタッキーダービーに臨む前に既に13戦しています。そして11勝の好成績を挙げていますが、2歳時の8月と10月、3歳時の3月と4月に、2回ずつレースを使うという状態でしたから「使い過ぎ」の懸念がありました。馬主としては「早い内に稼いでおこう」と考えたのでしょうか。それでもアファームドは、この期待に見事に応え、サンタアニアダービー、ハリウッドダービーといったG1レースを制して、ケンタッキーダービーに臨んだのです。

 アファームドの三冠レースは、3レースともアリダー号との競り合いでした。ケンタッキーダービーは1・1/2馬身差、プリークネスSはクビ差、ベルモントSは頭差で、いずれもアファームドが勝ち、三冠馬となったのです。

 三冠全てで2着のアリダーも、レイズアネイティブ系の名馬であり、アファームドのライバルとして名を馳せました。両馬の対決は5度、アファームドの3勝2敗でしたから、アファームドは三冠レース以外ではアリダーに負けていたことになります。

 2年連続で三冠馬が誕生した場合には「三冠馬同士の対決」の可能性があります。日本でもミスターシービーとシンボリルドルフは、いくつかの大レース(ジャパンカップ、有馬記念、天皇賞(春))で戦っていますが、シアトルスルーとアファームドも同様でした。
 アファームドがベルモントSに勝ち三冠を達成した年1978年の8月G1マルボロカップで両馬は対決、シアトルスルーが3馬身差でアファームドを抑えました。アメリカ競馬史史上初の三冠馬対決は大注目を浴び、我が国にも情報が沢山入って来ました。当時としては、とても珍しいことだったと思います。

 競走馬を引退したアファームドは、シアトルスルーと同じ、ケンタッキー州のスペンドスリフト牧場(アメリカ屈指の大牧場です)で種牡馬生活に入りました。
 産駒にはG1馬が3頭いますが、これは期待に比べていまひとつの成績と言わざるを得ません。
 日本では産駒の活躍はありませんが、ナリタトップロードやメイショウドトウのブルードメアサイアーとなっています。

 1970年代に突如という感じで登場した、3頭のアメリカ・クラシックレース三冠馬は、それぞれに、それぞれの活躍を展開しました。
 セクレタリアト、シアトルスルー、アファームド、この3頭の時代は、アメリカ競馬のひとつのピークであったと感じます。

 小回りのダートコースを疾駆するギャロップの凄まじさ、他の馬が止まっているかのような段違いのスピード、死力を尽くした競り合い・・・。この3頭のレース振りが眼に焼き付いています。

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