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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム18] アルゼンチン共和国杯とカネミノブ
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 現在のアルゼンチン共和国杯の前身は、1963年・昭和38年に東京競馬場芝2300mの3歳以上を対象としたレースとして創設されたアルゼンチン・ジョッキークラブ・カップ(ARJC杯)競走です。

 太平洋戦争終戦後、昭和30年代に入ると、日本競馬会も国際化され、世界各国の競馬サークルとの交流の中から、ビクトリアカップ(現エリザベス女王杯)といった海外名を冠するレースが創設されていったことは、本ブログの過去の稿にも記載しました。ARJC杯もそのひとつです。

 ARJC杯が創設される3年前の1960年・昭和35年に、アメリカ・ジョッキークラブ・カップ(AJC杯)競走が創設されていて、AJC杯は年明け1月開催、ARJC杯は5月の開催と、少し判りにくい時期がありました。

 この二つのレースは、両方とも現在まで存続していますが、AJC杯は年明け1月下旬の開催時期が不変で、前年12月の有馬記念を始めとするG1レース勝ち馬の年初最初のレースという位置付けが明確なのとは対照的に、ARJC杯は、開催時期・レースの性格共に時代と共に変遷を繰り返しました。

① 距離 1963年~1965年2300m、1966年~1968年3200m、1969年2600m、1970年~1971年2500m、1972年~1980年2400m、1981年~現在2500m
② 開催時期 1963年~1980年大半5月、1981年~1983年3月・4月、1984年~現在11月
③ レース名 1963年~1974年アルゼンチン・ジョッキークラブ・カップ(ARJC杯)、1975年~現在アルゼンチン共和国杯

 といった具合です。①の距離は1981年以降2500mで不変ですが、1981年~1983年が中山競馬場、1984年以降は東京競馬場開催となっています。出走条件も、3歳以上→4歳以上→3歳以上と変わりましたし、負担重量も別定からハンデキャップ制へと変わりました。
 これだけ縦横に動くと、ARJC杯は無くなったのか、と勘違いしたことも何回もありますし、レースの性格もどんどん変わりますから、出走馬の特性も時代により異なるレースになっています。

 アルゼンチン共和国杯の位置付けがようやく固定されたのが1997年です。この年から天皇賞(秋)の翌週に開催されることになり、距離も2500mで継続されることとなりましたので、天皇賞(秋)に出られなかった馬や、賞金を積み上げてジャパンカップや有馬記念、あるいは距離適性からステイヤーズステークスを目指す馬達のステップレースになりました。
 流浪?のレースだったアルゼンチン共和国杯も、秋のG1シリーズの合間を彩る「G2ハンデ戦」という味のあるレースとして確立されたのでした。

 こうしたキャリアを持つアルゼンチン共和国杯ですから、勝ち馬も文字通りバラエティに富んでいます。1968年のスピードシンボリや1971年のメジロアサマといった大豪馬や1991年のヤマニングローバルや1995年のゴーゴーゼットといったG2・G3重賞常連馬といった具合です。

 そうした勝ち馬の中で今回採り上げるのは、1978年の勝ち馬カネミノブ号です。カネミノブは、父バーバー、母カネヒムロ、生涯成績37戦8勝です。母カネヒムロは1971年のオークス馬、父バーバーは当時主流のプリンスリーギフト系(テスコボーイもこの系統)の種牡馬でしたから、デビュー前から注目されていた馬でした。
 しかし、2歳時は4戦2勝、3歳時は皐月賞6着、日本ダービー3着、菊花賞5着、他の重賞も上位入着はするものの、函館の特別レース大沼ステークスの1勝のみで重賞勝ち無しというパッとしない成績でした。

 明けて4歳になったカネミノブは、金杯2着、中京記念4着、京王杯4着と、引き続き勝ち切れない競馬を続けましたが、5月のアルゼンチン共和国杯(当時は東京2400m)でついに重賞初勝利、続く日経賞(中山2500m)も勝ち、ようやく本格化の時期を迎えました。
 とはいえ、ジリ脚脚質は変わらず、続く毎日王冠2着、目黒記念2着、天皇賞(秋)(当時は3200m)5着と、重賞常連馬ながら大レースには一歩届かないレースを続けました。

 そして1978年の第23回有馬記念競走を迎えるのです。この年の有馬記念は、菊花賞・天皇賞馬グリーングラス、日本ダービー馬サクラショウリ、菊花賞馬プレストウコウのクラシックホースやホクトボーイ、カシュウチカラ、エリモジョージ、メジロイーグルといった実力馬が揃ったものの、近時安定した成績を残している馬が不在の、混戦模様でした。

 15頭立ての9番人気だったカネミノブは、メジロイーグル、エリモジョージに続いての3番手で4角を回り、2頭を交わして直線で先頭に立ちます。プレストウコウもグリーングラスもホクトボーイも伸びず、インターグロリアがゴール前追ってきましたが、1馬身差で振り切りゴール。前年のグリーングラスの記録を破るレースレコード2分33秒7での有馬記念制覇でした。そして、カネミノブ⇔インターグロリアは大穴でした。
 この年、重賞3勝、有馬記念がレコード勝ちであったこともあってか、カネミノブは優駿年度代表馬の栄誉に輝きました。

 その後、6歳時のカネミノブは善戦するも未勝利、7歳時に目黒記念と毎日王冠を勝ち、7歳1月のAJC杯4着を最後に引退しました。

 カネミノブは、37戦1着8回、2着8回、3着6回、4着7回、5着5回、6着以下3回(皐月賞、天皇賞(秋)、宝塚記念)という、滅多に見られないほど「安定した成績」を残しています。
 特に、2400m~2500mのレースは好成績でした。クラシック3冠レースでも、一番良い成績が2400mの日本ダービーの3着。2000m以下も3000m以上も、いまひとつという珍しい馬でもありました。

 レースに臨んでは、常に自らの能力を100%発揮し、相手の力関係で順位が決まるというタイプだったのでしょう。故障も少なく、きちんきちんとレースに出続けました。「無事これ名馬」という言葉がありますが、カネミノブにピッタリの言葉で、いつものように懸命に走っていたら、1978年の有馬記念では先頭に居たということでしょうか。
 
 そのカネミノブが最初に勝った重賞が、アルゼンチン共和国杯でした。このレースは、カネミノブが一番人気でした。私はこの頃カネミノブに注目していましたが、出馬表を見たときに「相手に恵まれた」と思ったことを憶えています。特別レースに勝っていただけで、重賞勝ちが無かったカネミノブが本命だったわけですから。

 今思うと、アルゼンチン共和国杯は、上がり馬にとってそのキャリアに重賞勝ちを加え、賞金を上乗せしてG1競走に駒を進めるには絶好のレースでしたし、現在も同様です。2008年のスクリーンヒーローはその典型で、このレースで重賞初勝利を挙げると、一気に3週間後のジャパンカップに優勝しました。こうした位置付けのレースは、今後も重要です。

 7歳で引退したカネミノブは、当時の流行血統であったプリンスリーギフト系バーバーの代表産駒としてシンジケートが組まれ、種牡馬生活を開始、キーミノブを始めとして3頭の重賞勝ち馬を送り出しましたが、産駒に大レース勝ち馬が居なかったことや、流行血統の変化により、1991年にシンジケートが解散され、種牡馬としての役割を終えました。

 そして、1993年、繋養されていた北海道の北斗牧場を離れた後、行方不明となりました。何が起こったのでしょうか。「屠殺場に送られた」とか「当て馬にされていた」とか、色々な噂がありましたが、結局行方不明のままです。

 太平洋戦争前後の日本競馬には、大レース優勝馬が行方不明という例がありました。昔の欧米競馬にも、こうした例がありました。
 しかし、1993年という今から僅か20年前の我が国において、こうした事件が発生したことは、残念で仕方がありません。有馬記念馬にして年度代表馬であった名馬が「行方不明になり、おそらく殺されている」というのは、何ということでしょう。
 お母さんのオークス馬カネヒムロが功労馬として1997年に天寿を全うし29歳で没したことを思うとき、1993年にカネミノブを守る方法がなかったものかと、いつも思います。

 
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