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HOME   »   スポーツ共通  »  甲子園球場で「全日本選抜スキージャンプ大会」が開催されました。
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 1938年(昭和13年)1月10日のことです。

 荒唐無稽な印象を受けますが、阪神甲子園球場ホームページの「甲子園球場史」にジャンプ台の写真が掲載されています。

 今から76年前、太平洋戦争前にこうした極めてユニークなスポーツイベントが開催されていたことは、驚異的なことだと感じます。

 同じ1938年の2月27日には後楽園球場でも、同趣旨のスキージャンプ大会が開催されています。

 甲子園球場と後楽園球場に設置されたジャンプ台(木造)が、どの程度の大きさだったのかは正確には分かりませんが、優勝記録から観ると「高さ30m以上の構造物」であったようです。

[甲子園大会の優勝者の飛距離]
・1本目25.0m、2本目27.0m、3本目26.5m

[後楽園球場の優勝者の飛距離]
・1本目32.0m、2本目30.5m、3本目31.5m

 「全日本選抜」と銘打っているのですから、当然ながら選手はオリンピック代表を含めて、当時の日本のトップクラスが出場していました。

 この30m前後の優勝飛距離は、現在のジャンプと比較すれば短い(ジャンプ台が小さい)のですが、当時のジャンプ大会の記録(例えば、1930年に青森県大鰐で開催された全日本選手権大会の優勝記録が1本目36.5m、2本目35.0m)と比較すれば、それ程小さな台で行われた大会では無かったことが分かります。
 だからこそ「本物感」が有り、入場者数も多くイベントとして成功したのでしょう。本物に近い水準のスキージャンプを提供したところが、このイベントの凄い点のひとつだと思います。

 雪はどうしたのかというと、新潟県妙高山麓から列車で輸送したというのですから、これも信じられない感じです。
 当時の1~2月の阪神地域や東京地域の気温は、現在よりも低かったのかもしれませんが、日中になればさすがに一部は溶けてしまうでしょうから、追加の雪も確保していたことになります。

 運搬中に溶ける分も考慮すれば、相当量の雪を延々と(当時、妙高山麓から大阪や東京まで列車で運ぶとなれば、半日掛かりくらいの時間がかかったのではないでしょうか)運んできたことになります。これでイベント事業として成立したというのですから、またまた驚くばかりです。

 現在であれば「人工降雪機」を使いますから、雪国から鉄道列車で雪を運ぶ必要は無いのですが、そんな機器が無かった時代に、正面から本物の雪を用意するという対応には、感心させられるばかりです。

 1938年のイベント成功を踏まえて、1939年にも同様のイベントが開催されました。

 今度はまず後楽園球場で1月に行われました。ジャンプ大会のみならず、スラローム大会(回転競技)も同時に行われました。実施種目は「男子回転」「女子回転」「少年回転」と「スキージャンプ」の4種目。ジャンプ台の高さは39mだったそうです。

 そして2月には甲子園球場でも開催されたのです。

 この1938年~1939年の大会の目的は「雪に恵まれない大都市の市民にスキー競技をアピールすること」でした。何か、とても崇高な理念のように感じます。この2年間のイベントでは、大会の前後にスキージャンプ台を一般市民に開放し、滑ってもらっていたといいますから、目的を果たそうとする主催者側の狙いも伺われます。

 1939年は第二次世界大戦が始まった年ということもあってか、1940年には開催されませんでした。そして1941年には太平洋戦争が始まるのです。

 この「世紀のイベント」については、色々なご意見が有ろうとは思いますが、私は以下の諸点から、評価したいと考えます。

① 稀有壮大なるイベントを開催しようとする主催者側の高い意欲
 時は第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時期で、世界中で戦争・紛争が発生していた時代です。明るくは無かったであろう世相の中で、まだ一般には馴染みが薄いスキージャンプ競技の大会を、甲子園球場と後楽園球場という大都市の施設を会場として開催しようとする意欲、そして実行力は、ある意味では素晴らしいと感じます。

 21世紀の現代であれば、自動降雪機や金属パイプ等を使ったジャンプ台といった形で、当時よりは容易に同様のイベントを開催できると思いますが、実際には行われていません。(もちろん事業採算等も考慮する必要がありますが)

② 大勢の観客が押し寄せたこと
 戦前の日本国というと、とても貧しくエンターティンメントも少なかったという印象(おそらく間違った印象)を持ちがちですが、このイベントが成功したことや、観客動員力の高さを観る限り、こうしたイベントに参加できる一定の財力を多くの国民が保持していたことや、こうしたイベントへの強い好奇心が国民の間に存在していたこと、が感じられます。

 確かに戦争・紛争の時代でしたが、日本国民というか、少なくとも東京や大阪の人達は、こうしたイベントに反応する・できる人達だったのです。
スポーツイベントの持つ力を感じるとともに、日本人の好奇心の強さと心の余裕を感じると言えば、言い過ぎでしょうか。

 現在、夏の甲子園大会真っ盛りの甲子園球場。
 いつの時代にも、凄いエンターティンメントを考えて実行する人が居るものだと思いますし、当該イベントの成否・意義・歴史的な評価というのは人知の外にあるものだとも感じます。
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